【タナトスの喚び声】

エンドロールも其処其処に彼は、液晶を切って腰を上げた。
遠く鳴く夕刻の茅蜩と、何かを呼ぶ稚児の叫び声。
― 凡庸なデスゲームものだった。
玩具の如く無垢に壊れ逝く数多を、カメオの声で嘲笑う着包の歌。

こびりついて。口遊んで。くだらなくて。咽せ返った。

嗚呼
若しも僕が貴方を此の両手に掛けるならば。
決して道化等にせず、消える体温を慈しむでしょう。

生成りの肌も、真赭の爪も、烏羽の眼も俎上に居て。
木賊の胆も、黒鳶の脾も愛でては刻む、アナトミー。

カッターシャツに着替えて彼は、アルミのドアを開け外に出た。
雪崩込む湿気た夏の空気が、彼にしがみ付いては嗤った。
明滅する小路の街灯と、血腥い庭先の蕃茄の香りも一々、彼の情動を辟易させた。

(間奏)

生死が手を取り踊る、白御影のプロムナード。
Mortality の仮面の下、破顔う貴方の顔を知る。

嗚呼
若しも僕が貴方を刹那引き留められるならば。
決して恥じらい等せず、泣いて、泣いて思慕を語るでしょう。

生成りの肌も、真赭の爪も、烏羽の眼も此岸に居て。
そんな願いも、業火に撒かれ灰へと還る、タナトロジー。

宛ら縁日に往く様な浮ついた声で級友たちが、
歩き淀む彼を擦り抜けて、先に会場へと消えていった。
黒白の幕の内側では、揺れる煙と、洗牌の音。
「…」
何処かの遠くから、彼を呼ぶ声がした。


(かな)

(1A)
エンドロールも そこそこに かれは えきしょうを きって こしをあげた
とおく なく ゆうこくの ひぐらしと なにかを よぶ ちごの さけびごえ
ぼんような デスゲーム もの だった
おもちゃの ごとく むくに こわれゆく あまたを
カメオの こえで あざわらう きぐるみの うた

(1B)
こびりついて くちずさんで くだらなくて むせかえった

(1S)
ああ もしも ぼくが あなたを この りょうてに かけるならば
けっして どうけ などに せず きえる たいおんを いつくしむ でしょう

(1C)
きなりの はだも まそおの つめも からすばの めも そじょうに いて
とくさの たんも くろとびの ひも めでては きざむ アナトミー

(2A)
カッターシャツに きがえて かれは アルミの ドアを あけ そとに でた
なだれこむ しけた なつの くうきが かれに しがみついては わらった
めいめつする こみちの がいとうと ちなまぐさい にわさきの トマトの かおりも
いちいち かれの じょうどうを へきえきさせた

(間奏)

(2S)
せいしが てを とり おどる しろみかげの プロムナード
モータリティの かめんの した わらう あなたの かおを しる

(LS)
ああ もしも ぼくが あなたを せつな ひきとめられる ならば
けっして はじらい などせず ないて ないて しぼを かたる でしょう

(2C)
きなりの はだも まそおの つめも からすばの めも しがんに いて
そんな ねがいも ごうかに まかれ はいへと かえる タナトロジー

(3A)
さながら えんにちに ゆく ような うわついた こえで きゅうゆうたちが
あるきよどむ かれを すりぬけて さきに かいじょうへと きえていった
こくびゃくの まくの うちがわ では ゆれる けむりと しーぱいの おと
「…」
どこかの とおくから かれを よぶ こえが した