「おはよー」
近くにいた男子に挨拶をしてミナトくんが教室に入ってくる。
本人が観察を許可してるんだから、もう思いっきりどうどうと謎の試練に挑んでみようと思った。
ミナトくんと目が合った。
私に気づくとミナトくんがニコッと笑って手を振った。
私も手を振り返した。
近くの席の男子が少し驚いたような表情をしていたけど、気にしないようにしようと思う。
ミナトくんが席につくといつも一緒にいる子達が話しかけにいった。
見ているかぎりは普通の男子の日常ってかんじ。
授業中のミナトくんはけっこう真面目な表情をして一生懸命メモをしたりしていた。
私の勝手なイメージだと勉強が嫌いなようにみえたけど初めてミナトくんをちゃんと見ていると、明るいフレンドリーな性格だけどすごく真面目な男の子だった。
あと1回だけ見ておこうと思ってミナトくんを見る。
するとなぜかミナトくんが私を見ており目が合ってしまう。
予想外だったのでびっくりする。
ミナトくんは朝のようにニコッと笑ってピースをしている。
私のお昼ご飯は値引きされたパンとサラダ。
節約しないと欲しい物が買えないので仕方ない。
課題は早めに終わらせたいので広い生徒ホールでお昼を食べて課題を進める。
課題を終えて荷物を片づけているとミナトくんがいつもの子達と話しながら歩いているのを見つけた。
「ちょいちょいちょーい!本気なのかよ、ミナト!?」
えっ?どうしよう、聞いてもいい話なのだろうか・・?
「ああ、本気だよ。」
なぜか私が緊張する。
ミナトくんが何かをバッグから取り出した。
「俺のお昼ご飯はメロンソーダさ!」
緊張返してほしいな・・。
「ありえん・・、何でそうなるわけ?お前は草食動物なの?水分で生きられるタイプなわけ?」
「実はな・・、今月は節約しないとヤバいことになってしまったんだ・・」
「あー、あれか。レアカードついに当てたもんな・・」
「マジでミナトは運がいいよ!俺なんか同じ激弱モンスター6枚目なんだけど?!」
「当てたのはすごいと思ったけど、その代わりに友人のランチがメロンソーダになるとはね・・。」
とりあえずミナトくんも欲しい物のために節約中ということがわかったお昼だった。
午後はボスににらまれるいつもの日常であった。
胃が痛い。
「カエデ」
シオンが話しかけてきた。
「ちっちゃい女の子はなぜお姫様に憧れるんだ?」
シオンには妹がいる。
でも体が弱くて入院を繰り返しているらしい。
「うーん、なんだろうね。私も小さい時はシンデレラとかずっと好きだったし変身して戦う系にずっとなりたかったよ。」
「俺はずっとヒーローになりたかったから、理解はしてあげたいんだけどお姫様は詳しくなくてさ」
お兄ちゃんも大変そうだ。
トイレから出て帰ろうとするとロッカーにミナトくんがいた。
「おつかれ!カエデちゃん!」
笑顔でミナトくんが言う。
「おつかれミナトくん。お友達でも待ってるの?」
「そうそう!カエデちゃんを待ってたの!」
わ、私を・・?
「一緒に帰ってもいい?」
「うん・・」
なんだか恥ずかしくなった。
「どう?観察してて俺の帰る理由はわかった?」
「うーん、まだわからないかなぁ」
まだ1日目じゃさすがにわからない。
「あと6日あるから頑張って!」
この試練は楽しいけど難しい・・。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

春の楓(2)

閲覧数:62

投稿日:2023/02/18 01:22:27

文字数:1,374文字

カテゴリ:小説

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