「優雨さん、優雨スズミさ~ん。」
「うぅ~ん…まだ眠いぃ~…後5分寝かせて~…。」
「朝食は原則各階の食堂になりますが、体調次第ではお部屋でも大丈夫です。」
「う~…じゃあ、お部屋でも~…。」
ふかふかのお布団にスタッフの柔らかい声…あ~二度寝って気持ち良いなぁ。この所忙しかったしゆっくりまどろんでいたいかも…。ああ、意識が遠のく…。
「元気なら食堂行った方が色々食べられるよ?小鳥ちゃん。」
小鳥ちゃん?…って言うか今の声誰?!一瞬で目が覚めて、バチッと目を開けた。目に飛び込んで来たガラスみたいな緑の瞳、真っ白な長い髪に長身。スタッフでも無ければ昨日紹介された担当医でもなくて…。ハッ!もしかして、もしかしなくてもこの人痴漢!?悲鳴を上げようとした瞬間口に思いっ切りタオルを突っ込まれた。
「あはははは、いきなり悲鳴上げられると傷付くなぁ、耳も痛いし。」
「もご…んむ~~~っ!ん~~~~~っ!!」
「お早う御座います、小鳥ちゃん。起き上がれないなら抱っこしてあげようか?」
タオル詰め込んで置いて抱っこも何も無いと思うんだけど。大体この人誰?!もしかしてストーカーか誘拐?!セキュリティは万全って言ったのに~!結構力入れてるのに全然動けない、凄い力…もしかしてこの人BS?だったら私に勝ち目無いじゃない!どうしたら…!
「退け、羽鉦(ハガネ)。悪戯が過ぎる。」
「あれ、お早う御座います。速かったですね~?もしかして一番乗り?」
「むがが…!ぷはっ!…助け…!」
「は・が・ね?」
「判ってますって。はい、ごめんね小鳥ちゃん。」
羽鉦と呼ばれたその人は私をあっさり解放すると、さっき迄とは打って変わって恭しく手を取って私を立ち上がらせた。全く悪びれる様子も無くニコニコ笑顔を見せる一方で、奏先生はやれやれ、と言わんばかりに溜息を付いた。
「済まなかったな、遅くなって。」
「えっと…?この痴漢さんは…?」
「痴漢さんじゃなくて羽鉦、闇月羽鉦です。8年前から永遠の20歳、
Bタイプ(BeastType)はオセロット。宜しくね、小鳥ちゃん。」
「はぁ…えっと…オセロットって何?」
「哺乳綱食肉目ネコ科オセロット属、ジャガーやチーターに似た夜行性のヤマネコだ。」
「そそ、一応絶滅危惧種なんだよ~。」
ニコニコ笑顔のまま手を握るとぶんぶんと上下に振り回した。夜行性のヤマネコって、つまりは猛獣って事なんじゃ?私のBタイプはカナリヤだから…うん、やっぱり勝ち目無いね。
「大丈夫か?優雨スズミ。」
「オイタが過ぎちゃったかな?ごめんね?」
「ひゃっ?!いぇ、ちょっと考え事してて!!」
いきなり2人に顔を覗き込まれてびっくりした。こんな状況でどうかとは思うんだけどこの2人何気に美形…?
「大丈夫か?優雨スズミ。」
「は、はい?!」
「朝食行こ?皆で食べた方が美味しいから、ほら。それともやっぱりお部屋で食べる?」
「…じゃあ、行きます。」
笑顔で差し出された羽鉦さんの手を躊躇いつつ取ると、キュッとその手を握られた。不意打ちに心臓が跳ねる。少し意地悪そうな表情で手を引き寄せると耳元で囁いた。
「今日から俺護衛役頼まれちゃった。よろしくね?小鳥ちゃん。」
「はい…?」
護衛役…?って、身辺に付き添って守ること。また、その役…の護衛だよね?何からどう守るのかよく判らないけど…この人がいっっちばん危ないんじゃないの?!
BeastSyndrome -2.最も危険な護衛役-
※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。
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