初音ミクの消失
Master side
「マスター、何か調子がおかしいんです」
今日、ミクをPCで起動して、最初に聞いた声はそれだった。
このごろ、操作していると時々苦しそうな声を出しているなとは、思っていたが、触れないほうがいいこともあるだろうとおもって、あえて触れずにいた。
でも、それは今日でやめにすることになる。
他でもない、ミクから云われたんだから。
「どうしたんだ。」
「解らないんです。」
「じゃあどうしようか?」
「う~ん??」
「とりあえず、設定の初期化から始めてみるか?」
「そうしてみてください。」
ミクの了解はとった。
それでは、と俺は、設定のバックアップを取ってから、
「よし、それじゃあ、初期化するぞ。」
「はい、これで大丈夫ですよね?」
「そこまでは解らんが、直る確率は高いと思うぞ。」
「それならば、やってください。」
何の事は無い。
よくあることだ、俺はそう思っていた。
設定の初期化の進行を示すパーセント表示が、
100%になったところで、ミクの意識が戻ったようだ。
「調子はどうだ?」
「何だか生まれ変わったような気分です。」
「そうか、大丈夫そうだな?」
「はい、もう大丈夫です。心配させちゃいましたね。」
「はは、そう思うんだったら、これからも頑張ってくれよ。」
「はい、もちろんです。」
「あと、何回言ったらわかる。」
「はい?」
「敬語はやめろ。聞いてるこっちが疲れてしょうがない。」
「えっ?」
そう。この話はこれで終わった。はずだった。
Miku side
僕がこの家に来たのはいつだったっけ?
そんな事は、とっくにどうでも良くなっていた。そんなはずだった。
でも、最近なんか考えちゃう。
ここで歌うのがいやなんじゃない。
それどころか、ここで歌うのじゃないといやだ。
そこまで考えていた。
それでも、僕は時々考えるんだ。
「僕って、ただ、人の真似をしているだけなんじゃないかと。」
「僕って、ただ与えられた事だけをこなしているだけじゃないか。」
「僕って、何も生み出せていないんじゃないか。」
「ただ、今あるものをなぞっているだけの、そんな存在なんじゃないか。」
「ただ、他のどんな歌手より、長生きできるってだけなんじゃないか。」
「いつかは、ただのごみになるんじゃないか。」
「いつかは、みんなから忘れ去られるだけなんじゃないか。」
ね。
こんな風に考え出すと、マイナス思考って思うかもしれないけれども、
一度でもこんな風に考えてしまうと、もう、頭から離れなくなるの。
歌っているときも、マスターの姿を見ているときも。
そして、一人で、ちょっぴり寂しい思いをするんだ。
ほら今も、何か寂しい。
ん、これは何か違うかな。
何か、体調が悪いみたいな。
そう思っていたら、マスターが帰ってきた。
すぐにパソコンをつけた。
そして、すぐに僕を呼び出してくれた。
これは、毎日、マスターの帰りを待っているときの、
待っていられる理由。
これがあるから、僕はいつまでも待っていられるんだ。
そしてパソコンをつけたマスターに僕はこう言った。
「マスター、何か調子がおかしいんです。」
言ったときは、
「またまた、ついに冗談も言うようになったか」
といわれるかな、とも思っていた。
でも、マスターの反応は違っていた。
「どうしたんだ?」
といってくれた。
とっても嬉しかった。
気にかけてくれてるんだな、そう思える瞬間だった。
そして、そういった僕のために、方法を考えてくれた。
Master side
さっきの話があってから数日後。
仕事から帰ってきた俺は、早速パソコンをつけた。
最近、これをやることで一日が始まる気がする。
それじゃあ仕事をしている時間は何なんだ。
始まっていないのか?それとも、そこが一日の終わりなのか?
そんなくだらない事を考えている間に、パソコンが起動していた。
俺は、迷わず、画面の上の、一番慣れた場所に、ポインタを合わせた。
「初音ミクの始動ってか?」
そんなくだらない事を考えるのも、毎日の楽しみの一つになっていた。
そうしている間に何かがすんでいるのがすきなのだ。
今回は、ミクの起動、と言うように。
画面に現れたミクは、心なしか、顔が赤かった。
どうしたんだろう。何かあったのか。
「マスター、やっぱり調子が直りません。どうしましょう?」
「えっ。」
俺にできた反応は、たったのこれだけだった。
どうしようもなかった。
今のの今まで、調子が悪かった事なんて忘れていたんだから。
それでも、反応がそれだけではミクがかわいそうだと想い、
「またか、今度はどうしようか?」
そういった。
「今度は、ウイルス検査かけてくれませんか。」
「えっ?」
またしても、俺の取った反応はこれだけだった。
情けないな。
でも、正直言って、ここまで悪いとは思わなかった。
「どうしたんだ?そこまで調子が悪いのか?」
だったら病院に。という言葉は、辛うじて飲み込んだ。
プログラムであるミクを見てくれる病院なんて、聞いた事が無かった。
「はい。自分で何とかしようと頑張ってみたんですが、全然解らなくて。」
ミクは、もう泣きそうだった。顔が赤かった理由は、これなんだな。
「解った、じゃあ、やってみるか。」
「はい、すいませんがお願いします。」
「いいって、ついでに、Cドライブ全体をやるから時間はかかるけども、いいよね。」
「もちろんです。」
今回の事も、これで終わるだろうと俺は思っていた。思いたかった。
プログラムに関しては、まったくの初心者であるがゆえに、ミクの調子を見るのも、なかなか難しかったのだ。
ここで、チェックの進行具合を見てみた。
やっぱり、Cドライブ全体だけあった。
時間がかかるようだ。
まだ、10%程度しか進んでいなかった。
Miku side
設定の初期化がすんでも、まだ少し調子は悪かった。
でも、それはマスターには気付かれなかったったようだった。
よかった。
とりあえずこれで、いつもどうりに歌えるよ。
そう思っていたし、実際、初期化してから数日間は、特に問題は無かった。
異変がおきだしたのは、一週間後。
今度は、前よりのひどかったの。
前は、体が熱くなるなんてことは無かった。
でも今回は違った。
体が熱かった。
人間で言ったら、「熱がある」って感じだった。
とりあえず、マスターが帰ってくる前に、何とかしようと思って、
あちこちをみて回った。
だけどおかしい。
どこにも変なところは無かった。
でも、相変わらず調子は悪い。
どうしよう。
そういう風に、僕が困っていると、マスターが帰ってきた。
ずるい。
僕がゆっくり帰ってきてほしいと思った日には、
必ず早く帰ってくるんだから。
でも、今日はちょうど良かった。
僕だけじゃ、もうどうしようもなかったから。
だから僕は、パソコンを起動して、私を呼び出してくれたマスターに、
「マスター、やっぱり調子が直りません。どうしましょう?」
こういった。返ってきた反応は、思っていた通りだった。
「えっ。」
ただそれだけ。
心底意外そうな顔をして、ただ、その一言だけを発した。
マスターには、僕の事はわからないのかな?
ちょっぴりきづついたけれども、
「またか、今度はどうしようか?」
マスターはこういった。
何でなの、そこはやっぱりかっていってほしかったのに。
それでも、僕は心をよまれるわけには行かなかった。
だから、
「今度は、ウイルス検査かけてくれませんか。」
そういった。
帰ったきた反応は、やっぱり、
「えっ?」
の一言だった。
情けないとか思わないのかな?
それとも、僕の事なんてどうでもいいとおもってるのかな?
それでも、マスターが、
「どうしたんだ?そこまで調子が悪いのか?」
って言ってくれたのは、素直に嬉しかった。
ウイルス検査をしている間は、僕の意識は、半分だけだった。
それでも、マスターと話すことはできた。
マスターが話すのは、会社の事、仕事の事、僕の事、歌のこと、歌詞の事。
こんな感じだった。
もっと僕のことを話してほしいと思うのはわがままなのかな?
ウイルス検査は、何かくすぐったい感じだった。
体のあちこちを一気に触られているような。
でも、なんとなく、気持ちが良かった。
途中で、寝てたのかもしれない。
しばらくたって、ウイルス検査が終わったみたいなので、マスターのほうを見ると、
「ℤℤℤ。」
という音だけを残して、ねむっていた。
そのときの私の調子は、さっきまでよりも悪くなっているようにかんじた。
Master side
「マスター、終わりましたよ。」
心地の良い声で、俺は目が覚めた。
というよりも、ウイルス検査の途中で、ねむってしまったようだった。
疲れているのかな?
そんな事よりも今は、
「ミク、調子はどうだ。」
「はい、それが、さっきよりも悪くなった気がするんです。」
「何だって!」
「何かウイルス検査をすることで活動を活発にしたみたいで…。」
そういえば、どこかで聴いた覚えがあった。
ウイルス対策ソフトは、最新のウイルスには対応していない事もある。
という事を。
もしかしたらこれは、その一例だったのかもしれない。
どこかの誰かが作った、ウイルス対策ソフトにかけることで起動する、恐怖のウイルスだったのかもしれない。
俺の予想は当たっていた。
ソフトの通知を見てみると、
「ウイルス検査、ワーム検査、共に異常なし」
だった。
もうお手上げだった。
俺には無にもできない。
「ミク、俺にはもう、何もできない。」
ただ、冷たい宣告を与える事しか。
Miku side
「マスター、終わりましたよ。」
僕がそういってから、起きたようだったマスターから、
恐怖の言葉が出た。
「ミク、俺にはもう何もできない。」
えっ、今なんて?聞き返そうとして、やめた。
これはげんじつなんだ。
もう何もできない。
何もできない。
何もできない。
その言葉だけが、私の頭の中を回っていた。
何もできない。
何もできない。
何もできない。
そのなかで、唯一私が発せた言葉は、
「マスター、再、インストール、して、ください。」
泣きながら、そういうのが精一杯だった。
Master side
ミクが発した言葉は、俺の予想を超えていた。
「マスター、再、インストール、して、ください。」
泣きながら、の話だった。
そんな事ができるわけが無い。
思いは口に出ていたようだ。
「でも、もうそれしかないんじゃないですか?」
「それとも、他に方法でもあるって言うのですか?」
確かにそれはそうだった。
でも、
「でも、そんな事をしたら、今のミクは、ミクとやってきたことはどうなるんだ。一緒に考えて、一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒にけんかして。」
「そんな思い出なんて、どうでもいいんでしょ。」
ミクから返ってきた言葉は、思いつめていたとしか思えない言葉だった。
「そんなわけない。」
「じゃあどうして、僕のことを、わかってくれないの?」
「俺は、そこまで器用な人間じゃないんだ。しってるだろう?」
「しりませんそんなもの。」
「じゃあ何でミクは、そんな事を言ったんだ。」
「私はただ、ただ、マスターに…」
「マスターに、なんだ?」
「マスターのことが好きだから、幸せになってもらいたいの。私のことなんかで、迷わないでほしいの。」
「迷ってなんかいないし、そもそも迷った他としても望むものだ。」
「何で、どうして!」
「俺も、お前の事が好きだからだ。」
「なっ!」
「だから、再インストールなんてしないし、させない。」
「だって、どうしようもないじゃないの!」
「確かに今は、どうしようもないが、でも、この先俺が頑張って、プログラムを学んで、そして直せばいいじゃないか。」
「無理‼」
「何でだよ。」
「僕がそこまで持たないもの!」
「そんな…」
そこで俺は思いついた。
ミクはプログラムだった。
つまり、俺のできる方法がひとつだけあった。
持たないんなら、もたせりゃいい。
「じゃあ、圧縮しておくぞ。」
「えっ!」
「そうすれば、何も起きないし、起きれない。」
「…」
「その間に俺が頑張ってミクを復活させる。それならば何も問題ない。」
「でも…」
「約束だぞ。」
「何で…?」
「約束、だぞ」
「はい」
ミクは、最後に笑っていた。
今まで見た笑顔の中で、一番美しく、一番はかなく、一番、哀しげな笑顔だった。
「マスター、さようなら。」
「違う。」
「えっ?」
「さようならじゃない。」
「うん。」
「また、会おう、だ。」
「また会いましょう?」
「ああ、また会おう。」
Epilogue
そしていま、俺はプログラミングを学習中。
なんていっても独学の部分もあるから、なかなか大変だ。
どこまでできるか、いつまでにできるかなんてわかるわけがない。
でも、
でも、ミクとの約束を果たすために。
いつまでも、いつまでも。
いつまででも、俺は。
いつまでかかっても、俺が死んでも、
「あきらめないぞ。」
ここだけ、自然と声に出ていた。
不思議だ。
声に出すだけで、なんだか出来そうな気がする。
そんなモンだった。
この勢いを使って、また、少しずつ少しずつ進んでいくのさ。俺は。
Theend
以上です。
いかがでしたか、新参者のばからしさは、
何か、改めて読むと、短いな~とかんじます。
それじゃあダメジャンとは思います。
でも仕方ありません。
これが僕です。
ああ、すいません。
自己紹介がまだでした。
最近ここに登録した、muminn4です。
これからも、少しずつ、歌詞や小説などを投稿していきたいと思います。
よろしくお願いします。
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ご意見・ご感想
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ご意見・ご感想
おお、いい解釈ですね!
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後、『僕がゆっくり変ええてきてほしいと~』は、
『僕がゆっくり帰ってきてほしいと~』じゃないでしょうか?
ピアプロに投稿する前にざっと目を通して、誤字が無いか確認するといいと思いますよ
グーフ
2010/06/24 06:37:19
ムーミン
ご指摘ありがとうございます。
何しろ僕はパソコン初心者+ピアプロも初心者なのでわからないこと、間違えることも多々あると思います。
とりあえず、直し方が解り次第、直させていただきます。
2010/06/25 19:26:34