世界がみな海へ還るとき
それはわたしたちのからだが
みな 朽ち果てて
わたしたちのこころが
みな 大きな時の胸に抱きかかえられ
同じ歌声となるときだ
"わたしたち"を担ってきたいつかの誰かが
少しずつ複雑に造り上げてきたこのからだが
その折り重なる部屋の一つ一つに宿る
"わたしたち"の記憶全てが
溶け合って あるいは打ち消しあって
やがて一つの揺るぎない箱に還る
そうして暗い海の底に沈むわたしが
そっと手放すように浮かべたあぶくの一つから
どのわたしよりも小さなあなたが
その消え入りそうな体一身に
わたしの記憶全てを抱えて生まれるのだ
わたしたちがどこかへと消え果てるとき
この世界は数億年の過去へ
緩やかに しかし確実に向かうだろう
だがわたしたちは帰っていくのではない
わたしたちは わたしたちの記憶は
あなたの鼓動が海を揺らすのを待っている
わたしがあなたになるのを待っている
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