偶然点けていたニュースに見覚えのある建物が映っていた。
「―――っ!!」
驚いて立ち上がった拍子にコップが落ちて床にウーロン茶とガラスの破片が飛び散った。
「きゃっ?!…ゼロ?」
「あ…ごめん…!すぐ片付け…いってぇ…!」
指先にチクリと痛みが走って赤い血が落ちた。
「ちょっと、大丈夫?片付けるから絆創膏貼って来なよ…もう、何やってるの?」
「ごめん…。」
切った指を水道で洗って絆創膏を貼りながら、またニュースに目をやった。中央病院の一部が何者かに爆破された。と言う内容だったが、多分この前の化け物が暴れたんだろう。粉々になったロビーのガラスが映っている。不安で不安で目が離せなかった。同じ病院で化け物が出たからって何かあるとは限らないし、第一もう退院してるかも知れない、だけど…だけど、だけど、だけど!
「尚、この爆発により数名の行方不明者が出ており、現在行方を捜しています…。」
「ゼロー?ねぇ、ガラスって不燃で…あれ?…ゼロぉ…?」
いい加減にしてくれよ…もう沢山なんだよ…!何でだよ…?何でこんな事になるんだよ…?!俺はカラオケに行っただけなのに!いきなり変わり過ぎだろ、俺はこんなの望んじゃいない!そもそもあの時鈴々を追い駆けなかったら…!
「…めろ!止めろ!流船!」
「放せ…!放せよ!」
「お前が今騒いだって何もならないだろ!」
「…けど…だけど聖螺が…!何で聖螺が…!」
「流船!」
野次馬や警察なんかが詰め掛ける中、暴れて叫ぶ姿が目に入った。高校生位だろうか?
「聖螺…?」
「…うん…?」
「放せっ…!」
「流船君!駄目!」
二人が脇をすり抜けて走って行った。聖螺の…友達…?やっぱりあのニュースは聞き違いなんかじゃなくて…。
「彼女の知り合いか?」
「え…?」
「蛟音聖螺の知り合いかと聞いている。」
「…少しですけど。それが何か?」
「いや、別に…それじゃ。」
素っ気無く言うと長身の男はそのまま二人が走って行った方へ歩いて…。
「待ってくれ…。」
「はい?」
「…聖螺は何処に居る?」
「捜索中…何でそんな事を聞くんだ?」
何故そう思ったのかは判らない。聞かれたって多分直感としか言えない。いつもならこんな事は絶対にしない、曖昧な勘で動くとか、知らない奴に話しかけるとか、まして…よく知りもしない子の為なんかに…。
「聖螺を…助けたいんだ…。」
助けて欲しいのはいっそ俺の方なのかも知れない。だって…だってもう…。
『貴方が傷付くのが嫌だったんです…!』
もうずっと…泣き顔しか思い出せないんだ…。
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