頭痛と耳鳴りが酷くて、自分が何をしてるのかも何を喋っているのかも判らない。ただ悲しい、ただ苦しい、憎らしい、寂しい、壊したい、止められない…。

「流…船…。」

軽い金属の音と共に、何かが髪を絡め摂った。

「…え…?」

銀色の月、暁色の猫、少し古びてくすんだ、大きなペンダントだった。

『ねぇ、このペンダントって、俺何時から持ってたっけ?』
『何だ?急に。』
『ほら、これロケットって言ってさ、中に手紙入ってたんだ。』
『へぇ…。』
『誰のかな~って芽結と話してたんだ。』
『そう言うの好きそうだからな、芽結ちゃんは。』

「…っ?!…う…ぐぇっ…?!がはっ…!!」

込み上げる様な吐き気と頭が破裂しそうな記憶が流れ込んだ。誰…誰だ…?このペンダント…レイ…?聖螺…?違う…違う…あの時…これを持っていたのは…!

「――しっかりしろよ『お兄ちゃん』なんだろ?」
「…うっ…!ぐっ…!」
「随分と縛られちゃって…まぁ、無理も無いけど…。君も大丈夫?」

ぐらぐら霞んだ視界に声が響いて来る。誰だ…誰でも良い…俺を止めてくれ…芽結が…このままじゃ俺は彼女を傷付けてしまう…壊してしまう…そんな事になる前に…!

「…貴方…!」
「絶望してる場合じゃないよ、伽音芽結。目を開けて、彼を見て、彼を縛ってる『言魂』を
 見て、読み解いて。」
「『言魂』?…どう言う事?」
「直ぐに判る。先ずは彼を助けて。」

ゆっくりと芽結の手が触れた。怯える様にぶるぶると震えながら、だけど何かを必死で探る様に…。

「…助けて…。」
「…っ!…『寂』…『嘆』…『後悔』『孤独』『レイ』『執着』『記憶』『事故』
『流船』『家族』…っ?!何これ?『回避』『絶望』…『脚本』…?」
「やっぱりか…『脚本』に対応する言葉は『終幕』だ。」
「芽…結…!助け…!」
「『蕕音頼流』『解放』『終幕』!」

ガラスの割れる音と真っ白な光が、痛みを嘘みたいに掻き消した。そして俺の中に一つの記憶があった。

「…流船…。」
「…どうして助けてくれたの…?…純…。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-63.『脚本』-

反撃開始

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投稿日:2010/12/02 16:56:16

文字数:868文字

カテゴリ:小説

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