昼のチャイムと同時に流船の動きが止まった。ゼロは膝を付いてぜぇぜぇと息を切らしている。
「やっぱり無理なんじゃないの?」
「だ…まれ!」
「暑い…俺も休憩しよ…。」
正直途中で根を上げると思って無茶な提案をしたが、思いの外根性がある様だ。ゼロは休憩室のソファに座ると流石に疲れたのか大きく溜息を吐いた。
「ギブアップ?」
「しない…。」
「なぁ、聖螺ちゃんって子、彼女でも何でも無いんだろ?どうしてそこ迄躍起になる?」
「よく判らない…ただ…気になって…。」
「気になる…ねぇ。」
『気になるは好きの始まり』なんて、誰かが言ってたけど、コイツの場合は半分罪悪感から来てるんだろう。会って間もない女の子が自分に懐いて、自分を庇って怪我して、おまけに自分を責めさせたくないからと突き放して、気にしない方が珍しい。だったらこれ以上こいつを苦しめるのも無意味だろう。
「もう止めた方が良い、ゼロ。」
「え…?」
「素質も無い人間が言魂使になるのは無理だ。直ぐに根を上げると思ってたが、お前が
諦めないならこれ以上いたぶる訳にも行かない。彼女の居場所は割り出しているし、
準備が終わればこちらで救出する。」
「…だけど…。」
「罪悪感から自分を責めるのも彼女を苦しめるだけ…それに第一足手纏いだ」
「だけど俺は…!」
「コトダマ…『水影ゼロ』『記憶消去』『言魂使及び蛟音聖螺関連事項』ロード…。」
「何を…?」
「彼女と言魂の事は忘れて貰う、悪く思うな…お前の為だ。」
「止めろっ!」
「アクセス。」
引き金を引いた瞬間、ショートした様な音と共に言魂が弾かれた。足元にパラパラと何かが落ちる感触があった。
「…え…?」
「花…?」
弾かれた…?言魂が?そんな馬鹿な…。
「何をした?」
「何も…。」
さっきの放電…それに足元に散らばった花…まさか…。
「コトダマ『水影ゼロ』『発生』『礫』『誘導』ロード。」
「ちょ…おい!」
「良いから動くな。」
まさか…だけど…もし『彼女』が適合者なら…。
「アクセス!」
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