【13 22:33:41】
「アヤノ……!!」
ケンジロウは近づき、抱擁を交わす。
「ごめんね、お父さん」
「いや……大丈夫さ……」
「それに……シンタローくんも」
「大丈夫だ……君が何もないなら……」
全てが終わったのか。
キドはその言葉を全員に呼びかけようとした。
その時だった。
WARNING!! WARNING!!
レコーディング・キューブ一面に赤い文字で出る、『危険』の文字。
「大変です!! ご主人!!」
「エネ、どうした!?」
「なんだか自衛機能が働いたらしくて……!! もしかしたらこの街もろとも爆発されてしまうかも……!!」
「ちくしょう!!」シンタローは思わずスマートフォンを投げつけたくなった。「やつらそんなものまで用意してただなんて!!」
「落ち着け!! シンタロー!!」
「キドは落ち着いていられるのか、この状況を?!」
「落ち着いていられるわけないだろう!! だが……俺はリーダーだ。団員の安全を守るのが、リーダーの役目だ。俺が落ち着かないで誰がメカクシ団の指示を仰ぐ?」
「でも、このままじゃ……」
「私に、やらせてください」
声をだしたのは、エネだった。
「……エネ?」
「私がやります。私しかできないこと……やっと見つかったんです!」
エネの笑顔はとても輝いていた。
まるで、太陽みたいに。
「……エネ」
「コノハ……いや、遥」
「いままでありがと」
その言葉を最後に、スマートフォンは音声を発することはなくなった。
「エネ!!」
シンタローは居なくなったスマートフォンになんども語りかけていた。
【14】
8月22日。
あれから一週間が経過した。
人権を無視した人体実験の数々が露呈され、カゲロウ計画に参加していた科学者は逮捕された。以後、厳しい判決が下ることだろう。
ケンジロウは恩赦され、今も学校の先生をしている。相変わらずモモの担任をやっているようで、彼も彼なりに平和な日常を取り戻したのだろう。
「ご主人、こっちですよ!」
「だからそのご主人って言う癖やめろ!」
シンタローはいつもの赤いジャージを着て、ひとりの少女と歩いていた。
榎本貴音。エネと呼ばれていた少女は今彼の目の前にいる。その風景は周りから見ればまるでカップルだ。
「別にもうそう呼ばなくていいよ……」
「じゃあなんて呼べばいいんです?」
「……ごにょごにょ」
「なんですか、聞こえないですよ」
「シンタローでいいよ……っ」
そう言うとエネは振り返り、言った。
「ありがと、シンタローっ」
太陽のような笑顔で、彼女は言った。
カゲロウプロジェクト 35話【二次創作】
次回、最終話!!
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