早速、俺とレンは外に出た。もちろん、爆弾を見つけて解除するためだ。
「・・・レンはさ、」
「アカイト、口説かないでよね」
俺の言葉にレンは素っ気なく言って、すたすたと先を歩いて行ってしまう。そんな背中に、
「爆弾がどこにあるか、目星ついてるのか?」
そう言ってみると、背中がぴたっと止まった。
「ただやみくもに駆け回っても見つからない確率が高い。だから、これを使う」
俺はポケットから小型のパソコンを取り出す。これは今までのどの小型パソコンよりも小さく、手のひらぐらいの大きさで丸い形をしている。
「・・・」
「・・・そんなに離れるなって。俺の近くに居ろよ」
カイトにレンを頼まれた以上、レンに何かあったら完璧俺のせいだ。俺は言いながら、レンのそばに近寄る。
「それ使って、ほんとに爆弾の場所分かるの?」
レンが聞いてくる。俺は頷いた。
「爆弾が持つ独特の周波数に合わせると・・・」
ジャーン♪と効果音。その音に、
「・・・古くさい」
レンの視線にとげが生える。だが、
「これはな、ちゃんと爆弾の居場所を特定したって言う音なんだ。古くさいとかいうな」
と、俺が言うと、
「あ・・・そうなんだ。ごめん、アカイト」
案外素直にレンは頷く。その表情が意外と可愛くて、俺は少し見とれそうになったが、はっとして公衆時計を見る。午前6時58分。もうじき7時になるのか。脅迫状が届いてもう6時間ぐらい経っている。
「まずは、一番近いPGM放送局の屋上に行くぞ」
「えっw ・・・っていうことは、ぐみちゃんに会える?」
そう嬉しそうにレンが隣で言うから、つい、
「合えるかもな」
って、言ってしまったのだった。





「そういえば、今日の3時から大通りの屋台が開くから、そこにある爆弾は安全だねー」
帯人はそう言って、いすの上で伸びをした。
「そうだな。さらにどちらかの導線を切るんじゃなくて、両方を切らないと止まらない仕掛けになっているからさぞ苦戦を強いられることになるだろうな」
そのすぐ隣には、がくっぽいどが座っていた。
「・・・」
その様子を白い目で見るキヨテル。そんなキヨテルにがくっぽいどは声をかける。
「どうした? キヨテル。何かつかんだのか?」
「いえ、まだVOCALOID警察の動きはつかめてません」
「ハッキングだけが取り柄のキヨテルが、まだつかめてないのー? おかしいなあ、いつもだったら30秒ほどで大体の情報調べ上げるのに・・・」
帯人は、にやにやして言う。
「今回は・・・何やら防衛対策を施しているのか・・・。頑張ってみますが」
「へぇ・・・。あのアカイトっていう機械いじり、少しは腕上がったんだね」
再びパソコンに向き直るキヨテルに帯人は言う。
「前回までは、情報だだ漏れまくりだったから相手にならなかったんだけど・・・。今回は、厄介な存在になりそうだなぁ」
「1回敵対した相手だ。我々も成長するように向こうも成長する。決して見下してはならないぞ」
がくっぽいどはそう言って、にやりと笑った。
「まだ、向こうは我々のことに気づいてないみたいだけどな」





午前7時04分。俺たちは、PGM放送局の屋上にいた。やっぱり、走ることと近道をうまく利用したのが良かったのだろう。
「会いたかったなぁ・・・」
レンはしょんぼりする。
「いいじゃねぇか。俺がいるんだから」
俺が言うと、
「俺は、ぐみちゃんに会いたいの!!」
怒鳴られる。・・・誰か、俺のこと好きでいてくれる人はいないのかよ。女がいないんなら、この際男でも・・・って。
「こんなこと話してる場合じゃねーだろ。とっとと爆弾解除するぞ」
俺は、端にある爆弾装置に目をやり言う。
「そうだね!」
俺もかなりの腕前なのだが、レンは俺をだいぶ上回る技量を持つ。まぁ、機械に関しては、あの苦々しい一件からかなり成長して、今じゃレンやカイトでさえも俺に及ばなくなったけどな。だから、今回の爆弾を処理するのはレンだ。
「さーて、一体どんな仕組み・・・おっ」
爆弾のカバーを開けて、嬉しそうに顔をほころばせるレン。
「一番、簡単にして俺の大好きなパターンだ♪」
「どんなパターンなんですか?」
「えええっ!?? ど、どどどどうして、ぐみちゃんが、お、俺の隣に・・・っ!?」
ポケットから道具を取り出そうとしたレンは、目を丸くして思いっきり驚く。
「いえー。ついさっき、アカイトさんから、今からレンが爆弾処理するから見に来ないかって言われちゃったもんで」
そう言って、あははと笑うめぐっぽいど。
「私、VOCALOID警察がいる限り、この町は絶対安全だと思うんですよねー」
「・・・アカイト」
レンは振り返って俺を見る。俺は素知らぬ顔で、
「ん? どうかしたのか??」
と、言ってやる。そんな俺に声には出さずに、ありがとってレンは言って爆弾に向き直る。
「それで、このパターンはどういうものなんですか?」
興味津々、といった様子でめぐっぽいどはレンに聞く。
「まずは、ここの3桁のナンバーを今の時刻に合わせる」
「今、午前7時08分です」
「じゃあ、7,0,8。こうして、このレバーを下におろすと今合わせたナンバーがロックされる。そうすると、あとはここのコードと、こっちも切れば・・・」
ピー!という電子音が3秒程度鳴り響いて、レンは、
「これで爆発することはないっと・・・」
何事もなかったかのように、道具をポケットに戻して立ち上がる。
「へー。もう、1個目解除しちゃったんですか、さすがですね!」
そうにっこりして言って、めぐっぽいども立ち上がる。
「・・・次行こう、アカイト」
「いいのかよ・・・何も言わなくて」
俺はレンを見る。レンはしばらく黙ったが、口を開けることはなかった。俺は心の中で、ため息をつく。
そんなところへ、
「あのー、ちょっとお願いがあるんですけどー」
レンは何も言わないので、俺が対応する。
「何か?」
「いえー、この事件が無事に解決した後、VOCALOID警察のメンバーさんと、みんなでどこか食べに行きたいなーと思いまして」
てへへ、と笑いながら言うめぐっぽいど。
「あー・・・」
俺はわざと残念そうな声で言う。
「俺とカイトは忙しくて、悪いけど行けない。代わりに・・・」
俺はそっぽを向くレンを見やる。
「レンと2人で行けないか?」
レンの背中が、かすかに一瞬だけ動く。
「んー・・・」
めぐっぽいどは、しばらく考えてすぐに、
「いいですよ♪ メンバーの中で、一番可愛いですからね!」
にっこり笑顔で言った。・・・へー、結構好印象のようだ。呼んできて大正解だったのかもしれない。そんな余韻に浸っていると、
「俺も忙しいから、行けない。・・・アカイト、下で待ってる」
そう言うと、レンは屋上から姿を消した。
「な・・・。・・・・・・レン」
俺はへこむ。せっかくの話が、全部水の泡へと帰してしまった。そんな俺に、
「・・・私に、任せてもらえませんか?」
めぐっぽいどは言った。
「え?」
「あ、別に今からってなわけじゃなくて、その・・・事件が無事に解決したらってことです」
「レンのこと・・・きらってないのか?」
俺にとって重要な心配事はそれだけだ。
「それだけで、きらったりしませんよ。あれは単なる照れ隠しですから!」
「そ、そうか。なら・・・良かった」
安心する。それにしても、レンもなかなか人を見る目があるんだな。少し見直す。
その後、俺も屋上を出て、レンが待つ下へと駆け下りたのだった。







その頃、とあるビルの一室では。
「あーあー、ハッキングキヨテルもだめだめだねー」
帯人はソファに寝そべって、キヨテルに言う。
「ここまで苦戦するとは、前代未聞だな」
がくっぽいども同意する。
「何なんだ・・・! この防護システムは!」
「しょせんは過去の栄光だってねー」
「・・・くっ!」
キヨテルは勢いよくパソコンの電源を落として、外へ出て行ってしまった。
「・・・・・・ねぇ、がくっぽいど」
残された帯人は上目遣いに、がくっぽいどを見る。
「何だ?」
「キヨテルがかけてた眼鏡、サングラスじゃなくて良かったのかなぁ?」
「・・・ふむ」
がくっぽいどは、しばらく考え込むような素振りを見せてから、
「サングラスではかえって怪しまれると思うぞ? それにもうキヨテルはここにはいない。キヨテルのことだ、失敗をするような行動はとるまい」
帯人に優しげに言う。
「・・・そうだね」
照れた笑顔を浮かべて頷く帯人。
「ねぇ、がくっぽいど。今って・・・、仕事中?」
「どこで仕事中と定義するかで変わるが・・・。どうかしたのか? 帯人」
「あれ、しちゃだめ・・・?」
そうがくっぽいどに問いかける帯人の瞳は妙に色っぽさを含んでいた。
「そうだな。・・・このまま退屈のままに時を過ごすのも悪くはないが、今は帯人と2人っきりだからしてもよかろう」
「やった。今日はキヨテルもいないし、難しいのにしよー!」
そう言って、帯人は机の上に乱雑に置かれているものの中から、お目当てのものを見つけ出す。
「いっつもキヨテルがいるから、単純なものなんだもん。たまには、思いっきり難しいのにしなきゃ―」
帯人は、がくっぽいどの隣に座る。がくっぽいどは、帯人の手に持っているものを見て、言った。
「・・・『クロスワードパズル 上級者も吹っ飛ぶぐらいの上級編』か。確か、その本はもう絶版になったのではないか?」
「絶版になる前に買っておいた!」
「ちなみに、その本に載っている問題は、解けたのか?」
「ううん、全く!」
「・・・」
無邪気に、にこにこ笑顔な帯人を見て、心の中で静かにため息をついたのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

2話 VOCALOID警察、東奔西走せよ!! 【時限爆弾編】 

こんにちは、お久しぶりですもごもご犬ですこんばんは!
最近、早速ブクマDL大作戦で得た戦利品の中の戦利曲ばかり聴いています←
っていうか、お題wwwwまぁ、100曲以上あるから、どれも一番ってなわけじゃないけどねwwwwww
でも、どきどきした。思わず歓声が出たよー
ちなみに、何が一番かな・・・トータルでいけば一番大好きなバンドの意外な曲かな! 多分シングルじゃないと思うww
メールは恥ずかしいから、しないよwwww

という話はさておき、お待たせしました、ついに2話ができました。
ほんとは、ちょこちょこ投稿しようかなと思ってたんですけど、なかなか中途半端すぎて、もうちょっとまとまってから投稿するかなー・・・と、考えてここまで散々引っ張ってしまいました><
その分、長いです。前回の約2倍です←
ってことは、次回は約3倍か4倍? それはちょっとなー。
とりあえず、気長に待ってて下さると嬉しいです!
次回も、お楽しみに!^^

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投稿日:2011/04/23 13:36:40

文字数:3,984文字

カテゴリ:小説

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