「もう少し人数が多いと思ってたんだけどなぁ…。」

長い金色の髪をなびかせて彼女は少し苦笑した。忘れていたけど同じ年なんだっけ?興味無い上に立ち居振る舞いがもう年上みたいな感覚がしてる。

「あんなバレバレのメール見破らない方が馬鹿だと思ったけど?」

昨日の夜、銀髪男からメールが届いていた。

『適合者の皆様へ
 
 来たる○月△日、緊急に皆さんに報告があります。
 ルナリアビル前にAM5:30に集合して下さい。
 なお、この召集は時間厳守としますので、
 うっかり寝坊した馬鹿野郎は入れません。
 そのまま連絡がある迄待機していて下さい。 闇月幾徒』

「ほら、でもこんな状況だから、皆其処まで頭が回らないのよ。」
「はぁ…つまり俺は疑ぐり深いって事ですか、そうですね。」

溜息混じりに言うと彼女はクスクスと笑っていた。と、控えめなノックの音と共に空色の髪の男が部屋に入って来た。鬱陶しそうな髪と眼帯…病弱キャラ?

「あれ?一人ですか?2~3人は気付くかと思ってたんですけどね?」
「皆さん純粋って事で良いんじゃない?」
「本題は何なのさ?こんなショボイ推理ゲームやる為じゃないだろ?」

何処までも和やかな雰囲気に少しイライラして来た。下らない用事だったら領収書付で焼き餃子10人前位頼んでやろうかな、なんて思ったけど、二人の顔付きは少しマジになった。

「単刀直入に言うと…貴方は幾徒が掛けた保険なの。」
「保険?」
「先日幾徒様に言魂の原版データを渡したんです。其処には今迄に至る経緯
 と、この事態の収束方法を導き出せるだけの情報が入っていました。」
「え?じゃあ何とかすりゃ良いんじゃないの?」

頭に『?』がいっぱい飛び交った。元々ややこしい事は好きじゃないし興味も無いのでシステムや裏事情なんかは首を突っ込まなかった。鈴々がタイムマシン使って俺を助けてくれたって時も、何処か他人事みたいな感覚がしていた。

「この事態を収束させるには言魂システムの『最適合者』が必要なの…
 だけどどう調べてもそれが誰なのか判らなかった…判ったのは『最適合者は
 最強である』と言う事だけ。」
「最強?」
「蠱毒って知ってるかな?壷の中に生き物いっぱい入れて蓋をして、最後の
 一匹になるまで殺し合わせるって大昔の呪いの…。」
「うわ、グロッ!知るかよ気持ち悪い!それが何?」

二人は少し躊躇って顔を見合わせ、それから意を決した様に言った。

「適合者で同じ事をするの、システムの制御を解いた上で言魂を適合者に
 集中させるわ。」
「はぁ?!大丈夫なのかよ?!それ!」
「ん~下手したら大暴走するだろうね。で、戦って勝った人が『最適合者』
 って事。」

今迄システムだ何だと散々ハイテクだったのに最後は殴り合い?どう言う杜撰さだよ?!

「…あれ?俺が保険って言うのは?」
「言魂は『認識』に准ずるシステムよ?誰かが『嘘』って判っていないと皆
 暴走したら本末転倒になっちゃうじゃない。かと言って全員に説明したら
 構えちゃって暴走しないだろうし。」
「敵を騙すには味方からって事です。予想では2~3人気付くかなって思って
 いたんですがね。」

要するにやっぱり俺は疑り深いって事ですか。

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コトダマシ-95.敵を騙すには味方から-

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投稿日:2011/04/07 18:12:28

文字数:1,353文字

カテゴリ:小説

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