リアーナが云う悪意ノ闇とは、過去にイルヴァルス大陸へ堕り、大国同士の争いを裏で手引きした者たちの通称である。この闇は人知れず忍び寄り、人々へ絶望と恐怖を与えていき、やがて大陸全体を禍々しい悪意の渦に染めてしまう畏れがある。

 当然ながら、この場に居る4人も魔導国家ジャッロに起きようとする、非常事態について重々理解していた。

 まず、この非常事態について口を開いたのはダニエラからだ。

「なるほど、なるほど……カムパネルラ大臣は、闇の勢力から力を借りたと言うことですね?」

「うむ…恐らくな。3時過ぎに大臣は、ライフリー?、パーシャルデント?、ポリグリップ? なるアイテムを必要ないと申しておったじゃろ。妾はそれに疑問を抱き、レオナルドに監視を頼んだのじゃ」

「ふつうに考えて、ご老体だったヒトが急に元気になるのは、あり得ない話ですわね……」イザベラはそう言って指で顎を擦っている。

「本音を言うとな……」

 リアーナが言葉を発すると、表情が悲哀の感情に満ちていた。これは大臣であるカムパネルラの行く末を思うと、心が憂愁に閉ざされていき悲しくなるからだ。

「妾はカムパネルラを疑いたくはない……。幼き頃から迷惑ばかり掛けておるしな、女王になってからも頼りになる家臣なのじゃ……」

「女王陛下……」

 これから女王として下さなければならない選択にミスティークの3人は、リアーナと同じように悲哀の感情が顔に現れていた。しかし、ことの重大さを加味すると国を裏切って個人を守るのか? 国を取って規律を護るのか? と言う、彼女にとって究極の選択を迫られている。

 そして……リアーナは、悩んだあと──こう言った。

「魔導国家の頂点に集いしミスティークたちよ、大臣カムパネルラを粛清せよ。魔導国家ジャッロは大陸の規律を護りし宿命(さだめ)があるからな……」

 粛清という文字には、独裁国家で国を治める者が政策上で対立する相手を抹殺し、武力行使で自分の思い通りにすることを云うのだが、リアーナの場合は違った。
 彼女の粛清は厳しく取り締まって、不純、不正なものを除き、整え清めることに意味を持つ。それは即ち、闇の力を得てしまった者を暗殺することにある。

 魔導国家の頂点に君臨する者として、二度とこの大陸内に負の歴史を刻んではならない責任があるからだ。

『仰せの通りに女王陛下……』

 レオナルド、ダニエラ、イザベラからなるミスティークの3人はリアーナの前に跪いていく。女王から与えられた、暗殺の指令を請けたからだ。
 3人は揃って部屋から出ていくと、ジャッロ城に併設する教会を目指すのだ。右手にナイフ、左手には魔術師の杖を装備し、これから起こす戦いに備えていた。

[ジャッロ城の教会内]

 彼らが教会内へ入ると、さっそく粛清の目的となる人物を捜しだしていく……。

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投稿日:2020/03/02 00:49:57

文字数:1,194文字

カテゴリ:小説

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