夜。
夜とは闇。
ひたりひたりと、音も立てずにそこに居る。
わたしはひとり歩いている。
紛いの明かりが照らす夜道。
闇とは静。
楽の無い音だけが、しずかに遠くで鳴っている。
音。
どこかの家の冷蔵庫が動く音。
音。
鳴らない羽虫の音。
静かに耳を浸す。
わたしはドアを閉めて、慣れた部屋にもどる。
窓には月。
それは闇に寄り添うもの。
けして、隠しはしないもの。
ああ、わたしはさっきほんとうに鍵をかけただろうか?
ああ、確かにかけたよ。
それなのに、ドアの隙間から闇が入り込んでくる。
ひたりひたりと足下を覆う。
耳の中、音が掠む。
ひたり、ひたり、浸っていく。
わたしはひとり、ぼうっとそれを眺めている。
夜とは闇。
闇とは静。
それはわたしを切り取っていく。
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