ずるずる引き摺られて連れて来られた場所は中庭だった。お昼時なせいか殆ど人は見当たらない。木陰から見えるバラがゆらゆら風に揺れていた。
「わー綺麗なバラですねー。」
「白々しい!そこに正座!」
「はい…。」
木陰の芝生に大人しく正座した。羽鉦さんは心臓弱い人なら発作の一つも起こしそうな位の目付きで睨んでる…。怖くて思わず目を逸らした。
「昨日言ったよな?俺がここの責任者だって…。」
「はい…。」
「仮にもそんな人間が妙な噂が立ったらどうしてくれるんだ?ん?」
「すすすす、すいません!」
「はぁ…ただでさえそう言う噂とか多かったのにどうすんだよ、全く…。」
あ、多かったんだ。そうだよね、あんな綺麗な男の人2人が仲良いとそう考える人絶対居るよね?私だけじゃないよね?ちょっと安心しても良いですか。
「本当にごめんなさい…ただ応援しようと思っただけだったんです…。」
「だから応援とか要らないって…そもそも俺は…ああ!もう…!」
羽鉦さんは頭を掻きながら座り込んでしまった。悪い事しちゃったなぁ…。でも興味本位だけで応援しようと思った訳じゃ無いのも確かだった。誰かが大好きで、その人の為に何かしたくて、その人の役に立ちたいと思うのはきっと同じだと思ったから。そしてそんな風に一生懸命になれるのが少し羨ましいとも思ったから。
『――助けるから…。』
え…?
『――ずっと側に居る…。』
何…?
『――約束だよ…。』
誰…?
「…スズミ!!」
「え…?あれ…?」
「大丈夫か?!貧血か?!」
「大丈夫…です。ちょっと眩暈がしたみたいで…。」
どうやら一瞬意識を失っていたらしい。私は抱きかかえられる形で羽鉦さんの腕に支えられていた。羽鉦さんは大きく息を吐くと熱を測っているのか私の額に手を当てた。随分心配させちゃったんだろうか。
「お前に何かあったら騎士に何て言えば良いか…益々俺は役立たずだな。」
「…そんな、そんな事無いです!」
「ん?」
「羽鉦さんは全然役立たずなんかじゃないです!奏先生だって絶対そんな風に
思ってないです!自分の事大好きで、自分の為に何かしようって思ってくれる人
の事役立たずなんて、私だったら絶対思ったりしません!だから…!」
急に視界が真っ白になった。それが羽鉦さんの髪だと気付くのに少し掛かった。
思い切り抱き締められてて、耳元で少し掠れた小さな声が言った。
「…羽鉦さん…?」
「ゴメン、それ…反則…。」
見えないのとびっくりしていたのとで、私は知らなかった。羽鉦さんが耳まで真っ赤だった事…。
BeastSyndrome -8.ゴメン、それ…反則…-
※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想