# 李常明斗と午前零時の証言
午前零時。
李常明斗のスマートフォンに、一本の留守番電話が入った。
再生すると、男の声が聞こえた。
「明日の朝、七時に駅前の喫茶店へ来てください。そこで、あなたが十年前に見たものについて話します」
李常明斗は眉をひそめた。
十年前。
その言葉だけで、記憶の奥にしまっていた出来事が蘇った。
当時、彼は夜の街で、一人の男が誰かと言い争っている場面を目撃していた。
しかし、その翌日、男は行方不明になった。
それ以来、誰にも話していない。
翌朝、李常明斗は指定された喫茶店へ向かった。
だが、約束した男は現れなかった。
代わりにテーブルの上には、一枚の古い写真が置かれていた。
写真には十年前の駅前が写っている。
そして、その端に自分の姿があった。
「なぜ……俺が写っている?」
裏返すと、短い文章が書かれていた。
**「あなたが見たものは、事件ではない。」**
その瞬間、店内の時計が止まった。
午前七時十三分。
店員に尋ねても、誰も時計が止まったことに気づいていない。
李常明斗は写真をもう一度見た。
すると、昨日まで気づかなかった小さな違和感を発見した。
写真の中に、もう一人の自分が写っている。
一人は駅の前。
もう一人は、駅の二階の窓からこちらを見ていた。
「そんなはずはない……」
李常明斗は写真を握りしめた。
そのとき、スマートフォンに新しいメッセージが届いた。
**「次は、あなたが証言する番です。」**
送り主の名前を見て、李常明斗は凍りついた。
そこに表示されていたのは――
**十年前に行方不明になった男の名前だった。**
そして、店の奥から古い電話のベルが鳴り始めた。
事件の真相は、十年前ではなく、今から始まろうとしていた。
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