痛い程に手を引かれたまま暫く歩いていた。振り向きもしない。見張っててって、もしかしてあの子が来るのが嫌だったからなのかな?だったら私また役立たずに…。
「腹減ってないか?」
「え?」
「何か食う?それともどっか行きたい所とか無い?」
「別に無いけど…ねぇ、さっきの…。」
「何処でも良いよ、買い物したいなら荷物持ちでも何でも…。」
「待ってったら!」
矢継ぎ早に言うもんだから苛立って思わず声を荒げてしまった。だけど顔を見て少し後悔した。泣いても怒っても居ないけど、辛そうなのに無理に笑ってるのが痛々しかった。
「ねぇ、大丈夫なの?」
「何が…?」
「その…見張っててって、さっきの子が嫌だったから…なの?私てっきり彼女かと…。」
「まさか…。」
自嘲気味に笑うけど、もう泣きそうにしか見えなかった。言葉に詰まっていると掴まれていた手を放された。
「付き合わせて悪かったな。」
「ちょ…頼流さん?」
「レポート書くから、それじゃ。」
フラフラ歩き出したのを今度は私が捕まえた。さっきは気付かなかったけど、凄く手が冷たい。寒くも無いのにこんなに冷たいのって変じゃないの?
「ねぇ、ちゃんと休んでる?手、凄く冷たいけど。」
「冷え症なんで手が冷たいだけ…さっき寝たよ。」
「寝たって、ほんの20分位じゃない。ちゃんと横になって六時間睡眠取らないと体に
悪いのよ?」
「20分も寝れば充分。第一勉強とバイトあるしそんなに寝なくても良い。」
「良くないわよ!倒れたらどうするのよ!」
「…眠りたくない…。」
「え…?」
呟く様な、押し殺す様な声だった。顔が真っ青なのは日陰のせいじゃなくて、手が冷たいのも気のせいじゃなくて、この人、多分ずっと眠ってない…。
「ちゃんと寝ないと…もうお酒でも何でも良いから、無理にでも横になった方が…。」
「無理。」
「頼流さん!」
「…なら体貸してよ。」
「…は?」
「何でも良いんだろ…?流船…弟の代わりやって。」
弟さんの顔知らないけど、ちょっとだけ物凄い爛れた想像した私って一体…。
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