逃げ水
たまらず飛び込んだ木陰 土砂降りの蝉の声
二人肩並べた秘密基地 持ち寄った菓子を分けた
青空を映すぬるいプール 騒がしい水飛沫
僕を焼く眩い光が
あの日々の君の輪郭を溶かしていく
僕らの夏があった 宝物を拾い集めるような夏が
雑にしまい込んだ輝きは 次第に埃を纏って
逃げていく水を追いかけて走った
陽炎の向こうで君が笑ったから
汗を拭うのも忘れて走った
疲れなんて気付くこともなく
届かない 縮まらない 不思議を追う遊びを
終わらない 明日を 明後日を 疑わずに
目の回るスピードで流れていく 四角く区切られた景色
二人の歩幅とは違いすぎて
あの日々の君を置き去りに過ぎていく
僕らの夏はあった 思い出の底 仕舞い込んだ夏だ
今は遠くぼやけた輝きに 縋るように手を伸ばした
逃げていく水を追いかけて走った
あの日の僕は まだ何も知らずに
離れていく距離を埋めるように走った
限りある時間なんて知らずに
届かない 縮まらない 不思議を追う遊びを
止まらない 明日に 明後日に 追いやられて
出した手紙は届かない
伸ばした手は届かない
僕の声は届かない
辿り着けない 陽炎の先
あの日のままの君のいる場所は
逃げていく水を追いかけて走った
陽炎の向こうの君は笑ったかな
汗を拭うのも忘れて走った
疲れた足が縺れて気付く(疲れなんて気付くこともなく)
届かない 縮まらない 感傷を追う遊びに
止まらない 明日に 明後日に 押しやられて
癒えていく傷を祈るように包んだ
陽炎の向こうで君が手を振ったから
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