miss-you
第七話 懐かしき友の依頼
この町は、全然変わっていないな。十数年ぶりに帰って来たのに、風景は昔のままだったから。まるで、私だけタイムスリップしたみたい。そんな幼稚な事を考えてしまう。
この町に帰ってきたのは、私の犯した罪を償う為だった。さあ、行こう。あの人が待つ、あの病院へ。
病院の受付嬢に身分を明かし、目的の部屋を教えてもらった。
カツーン、カツーン。
私の歩く音だけが病棟に広がる。
ここは、延命治療専門の病棟なのだ。だから、人の出入りは少なく、当然誰にもすれ違わない。
延命治療には様々な意見があるが、医学的には死を迎えた体でも、機械の力を使えば生きている時と変わらない状態を維持出来る訳で、残された家族にとってはそれで十分なのだ。
「…ぅあっ、キンチョーして来たぁっ!」
お目当ての部屋の前に立ち、ドアノブに手をかけようとして悶える私。端から見たら絶対怪しい人だ。
「ふーっ、ふーっ、はーっ!よしっ!」
深呼吸をして、かけ声と共にドアを開ける。
ガラガラガラ…
ガラガラガラ。
熱々のご飯を食べていると体が火照って来たので、席の横にある窓を開ける。
「ん~めぇっス♪」
動物園のヤギみたいな声を出しながらず~ず~味噌汁をすする、俺の前に座ってる部下にデコピンを食らわしてみる。
ぴしっ。
「いてェっス!な、何するんスか!」
「ん?暇つぶしにデコピン。」
「ひでェ、職権乱用っス!訴えてやるっス!」
「じゃ、今日の飯おごってやんない。」
「デコピンでもしっぺでも自由にして下さいッス!」
「よし、じゃあ味噌汁タバスコの刑に処してやろう。うりゃっ♪」
「ひいっ!ひどいッス~~!」
「ははははは。」
年甲斐もなく、部下をかまって遊ぶ俺。
と、そこへ。
「社長、お客さんがきましたよ~。」
「飯食ってるから、待っててもらえ。」
「それがですね、何か急ぎの用事らしいのです。しかもギャー国人なんですよ!」
「ふーん。」
気のない返事をして、お茶を飲
「ふぁいやぁ━━(;`Д)=<火火火<━━っっ!」
辛かった。いつの間にかタバスコ返しをされていた様だ。あえなく撃沈する俺を指さして笑い転げて、しかもサムズアップなんかしてやがるし。このやろう、後で覚えておけよ。
応接室には確かにギャー国人が座っていた。俺に気付くと立ち上がる。
「ミスター雨天女ですか?私はこー言うモノです…ってワオ、立派なタラコクチビ~ルですネ♪写真撮っていいデスカ~?」
「国へ帰れ。」
「ア~っ!そんな冷たい事言わないで下さ~い。てかこのまま帰ったらシオンに絶対お仕置きされまーす!」
「シオンとやらにお仕置きされればいいだろ。じゃ、俺はまだ飯食うから。」
「そんなー!せめてこれを受け取っておくんなまし!」
そう言って封筒を差し出す。こいつ、本当にギャー国人か?
受け取る。
ビリビリビリビリビリビリ。
細かくちぎる。
そしてごみ箱へポイ。
「ノーっ、なんて事をするですかーっ!マジ私シオンにぶっ殺されま~す!」
「それ、中身ないだろーが。下らん冗談やる暇あるならさっさと本物よこせ。」
ズビシっ!
「アウチっ!オウっ、バレてしまいました!そしてデコピン痛いで~す。はい、コレ、本物。」
「ったく。どれどれ…ふんふん‥うぉ。」
その封筒の中には、便せんがあった。そこには、アメリカで博士になった始音からの依頼が書かれていたのだ。要約すると…
博士になった事、研究の為に新しい機械を作る必要が生じた事、部品不足が発覚したが分量が少なすぎる為にほかの会社に断られてしまった事。
…が書かれていた。
「ふむ。解った、引き受けよう。」
「ありがちょうござます~!」
「ありがとうございます、だろ!日本語は正しく使え!」
「こめんなさい。」
「~!もういい!ただし!条件次第では受け付けんからな。」
「鬼!悪魔!タコ!イカ!シオン!」
「最初の二つは解るが、残りはどーゆー意味だ!」
「私の怖いモノで~す!シオン一番怖いネ!」
きらーん。
「これ食えよ、うまいから。」
おやつに食べようと買っておいたたこ焼きを指さす。
「オウ、ゴチになりま~す。ん~、デリシャース!これ何と言う料理ですかー?」
「ん?たこ焼き。タコがたっぷり入ってて、うまいって評判の店のだぜ。」
「ノーっ!おいしすぎて気付かなかったで~す!てか何かかゆくなってきました!」
「そうか、ならこれを食えばよくなるぞ。」
そう言っておやつのあたりめを指さす。
「オウ、これは何デスカ~?」
「漢方薬だよ。聞いた事あるだろ?」
「オウ、カンポー中国のお薬だと聞いた事アルね。では一個。ん~、苦いと思ってましたが意外とおいしいでーす。」
「それ、イカから作ってるから。」
「ノオォォォっ!」
ぷるっぷるっぷるっ。ぷるっぷるっぷるっ。ギャー国人の携帯が騒ぐ。
「ぎゃぱわーっ!シオンから電話来たアル!出るの怖い、でも出ないと殺されマ~ス!」
ギャー国人の携帯を奪い、取り返そうとして「あーっ!私の携たぐほぉっ!」こけたギャー国人は無視。通話ボタンを押し、声色を変える。
「もしも~し、何ですかシオ~ン。」
「うまくいったの、ジョン?」
こいつ、ジョンって言うのか。何か部屋の隅で小動物みたいな震え方してるけど。
「あのねあのねシオン、失敗しちゃったヨ~♪」
「な・ん・で・すっ・て~!」
おおう、確かに怖いかも。てか始音全然気付いてないし。
「もういいわ、直接私が行く!」
おや?何か妙な事になって来たぞ?
「あ、あのさ始音…っわ!」
切られた。すかさずリダイヤル。
ぷるっぷるっぷるっ。ぷるっぷるっぷるっ。
お客様のかけた番号は、現在使われ
「わりい、始音がここに来るってさ。どうする?」
「ひいいいっ!もうおしまいだああっ!」
そう叫ぶとギャー国人ことジョンは社長机の下にもぐり込んでしまった。
図らずも始音が来る事になってしまった。やばい、マジで何て言えばいいか考えなきゃ。とりあえず部品は用意しておこう。
ついついほころぶ頬を軽く叩き、行動に移る俺。
この時の俺は、世界に終焉が来る事と新たな世界が始まる事を肌で感じていたのかもしれない。
そして、真実を手にする。
[次回予告]
今こそ、目覚めの時。
次回、《覚醒》。
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