「さあ、いってらっしゃい、」


仙女はサンドリヨン(Cendrillon)にそう告げた。


「はいっ! ありがとうございます! いってきます!」


サンドリヨンは仙女に頭を下げ、馬車に乗り込み、舞踏会へと急いだ。


仙女はサンドリヨンが去った後、こう付け足した。





「私のサンドリヨン。 フフフ。」





【灰かぶりの】サンドリヨン(Cendrillon)【真実は】




私は舞踏会へと急いでいた。


その理由はもちろん、憧れのあの人に会う為に...



姉や母にこき使われてきた毎日――


「サンドリヨン! 早く洗濯を終わらせないさいよ!」


「あらサンドリヨン、居たの? 汚くて気付かなかったわ。」 


「当たり前じゃないの。 あんたはそこらへんのネズミと一緒ね。」 


「アハハハ!! そうね! あんたはやっぱりサンドリヨンだわ!」


「灰かぶりなのね! それぴったりじゃない!」



毎日、家事をさせられ、悪口を言われてきた。


でも、今はそんな事どうでもいい。


私はあの魔法使いさんのおかげで綺麗なドレスが着れて、


あの人のもとへと行けるのだから。


これ以上に幸せな事はないわ。


きっと、これは神様が与えてくれた、一度だけのチャンスなのね。


だから私はこのチャンスを無駄にしない。


今はあの人のもとへと向かう為にただ走る。




「ふぅ・・・ここね。」


私は溜息をついた。 疲れたぁ・・・。


「やっと着いたぁ・・・。」


必死で走っていたら、いつの間にか舞踏会の会場へと着いていた。


あの人はどこだろう・・・?


大きく構えていた扉を開けて、中に入る。

・・・! 居たっ!


急に私の心臓は高鳴る。


ドクン、ドクン、ドクン・・・


この鼓動は止められない。




ちなみにあの人と出会ったのは、一ヶ月前ぐらいだった気がする。


姉達に買い物へ行くように言われ、


とぼとぼと買い物へ出掛けていた時。


「あ、ごめんなさい!」


誰かに肩がぶつかってしまった。


「あ、大丈夫だよ」


その人はそう言ってニコリと微笑んでくれた。


その瞬間に私は恋に落ちた、のかもしれない。


その「誰か」があの人だった。



まあ、そんなこんなであの人の事が好きで・・・///


その人を今から私はダンスに誘おうとしているワケで・・・


でもあの人は結構人気があるからなぁ・・・。


私と最初に会った時にも、


周りの女の人の視線が私に向けられていた気がする・・・あはは・・・。


こんな私の事なんて見てくれるだろうか?


もしかして私の事なんてすでに忘れているのではないのだろうか?


・・・だめだめっ。 そんなネガティブになっちゃだめっ。


<私の事は見てはいないけど、ちゃんと覚えていてくれる!>


こういう事にしておこう。 これで不安は解消された。


勇気を振り絞って、あの人に声をかける。


「あ、あのっ!」


「はい。 何の用かな?」


「もしよければ私と一曲お願いしますっ!」


誘えたああああ! 私の心は達成感に見舞われた。


「うーん・・・僕でよければ。」


それはつまり・・・。 成功っ!?


「ぜひお願いします!」


「うん。 いいよ。」


やったああああああ! 次に私の心は歓喜に見舞われた。


司会が、


「それではダンスパーティーの始まりです。 曲はサンドリヨン。」


「え・・・?」


私と・・・同じ。


「ん? どうしたんだい?」


あの人は私の異変に気付いたのか、声をかけてくれた。


「いえ、なんでもないです・・・。」


それを聞いて安心したのかあの人は胸を撫で下ろした。


「それでは、踊りますか?」


私はあの人に声をかける。


「うん。 踊ろうか。」


それに答えるようにあの人はうなずく。


朝まで踊る夢だけ見せて♪


曲が流れ始める。 それに合わせて私とあの人も踊る。


こんなに幸せな時はないだろう。


「名前を・・・聞いてもいいですか?」


どうしても知りたかった事をダンス中に尋ねる。


「始音カイト・・・カイトでいいよ。」


始音・・・カイト。っていうのね。


私はこの名前を一生忘れないと心に決めた。


「へぇ・・・カイトさんでいいですか?」


「いいよ。 きみの名前は?」


な、名前を聞かれた・・・。


「サンド・・・ミク。 初音ミクです。」


危ない危ない。 サンドリヨンと答えるところだった。


「ミクちゃん、か。 いい名前だね。」


「は、はい。 ・・・っ!」


途端、体が思うように動かなくなる。


なにこれ・・・?


頭の中で声がする・・・。


<12時にお前はそいつを暗殺する。>


え・・・? 私がこの人を、カイトさんを暗殺・・・?


「・・・? どうしたんだい?」


「い、いえ、なんでも、ない、です。」


辛うじて返事をする事が出来た。


・・・! もうすぐ12時が来る・・・。


気付けば私の右手にはナイフが握られていた。


また頭の中で声がする・・・。


<そのナイフで殺せ。 お前が殺すんだ。>


え...私が、殺す、の? カイトさん、を?


好きな、人を? 嫌だ。嫌だ。嫌だ・・・。


・・・帰ろう。 私はそう決意した。


それがカイトさんを殺さない方法に一番いい。


音楽が終わり、次の曲に入ろうとする前に私はカイトさんに話しかけた。

「あ、あのっ!」


「なんだい?」


「もう・・・帰ります。」


「え・・・なぜ?」


「それは・・・言えません。」


思わず口ごもる。


ただ、小さくつぶやいた。


「ここに居るとあなたを殺してしまうから。」と。



「・・・そうか。」


カイトさんは全てを分かってくれたような目で、承知してくれた。


「ごめんなさい・・・!」


これで最後だったのに。 思わず涙が出てしまった。



これで全てが終わるはずだったのに。


はず、だったのに。



急にまたあの感覚が体を襲う。


<殺せ。殺せ。殺すんだ。さあ早く。>


私のナイフを握った手はカイトさんへと振り上げられるところだった。


だめ―――


一瞬暗示が解けた気がした。


その隙を狙って目を瞑って私はナイフを自分の左手に振り下ろした。


けど・・・目を開けると、ナイフが刺さっていたのは――


カイトさん、だった。


「いやああああああああああ」


私は叫んでいた。


私が、私がカイトさんを殺してしまった。


「嫌嫌嫌嫌嫌いやあああああああ」


周りの人達は何事か、と私を見ている。


ドレスを膝で裂いて、ティアラを投げ捨て、カイトさんを抱き起こす。


「ミク・・・ちゃん?」


死にそうなのにカイトさんは私を呼んでくれた。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


「だい、じょうぶ、だよ・・・」


「どこが大丈夫なんですか!? 私が、私が・・・」


「ほら、可愛い顔が台無し、だよ・・・?」


カイトさんがハンカチを渡してくれた。


涙で顔がぐしゃぐしゃだ。


「泣かないで・・・?」


「だって、だって私がカイトさんを!」


私はほぼヒステリー状態だった。


カイトさんを刺してしまった事への罪悪感が私に襲い掛かる。


「僕は・・・死ぬのか。」


「いやです! それなら私も死にます!」


私は自分で心臓を突き刺した。


大量の血が噴き出す。


「え・・・なん、で・・・?」


「わたしが、カイトさんを、好き、だから、です・・・。」


告白なんてどうでもいい。


途切れ途切れの言葉で会話をする。


息が苦しくなってきた・・・。


「僕も、好き、だった・・・」


え・・・? そんな・・・。


「初めて、見た、時から・・・。」


「私、も・・・です・・・。」





私とカイトさんは倒れた。 正確に言うと「死」というものだ。


















「「さようなら。 大好きな人。」」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【灰かぶりの】サンドリヨン(Cendrillon)【真実は】

やっと完成したああああああああ(ry

れっちぃ☆さんからのリクエストで「サンドリヨン」です!!

結構な時間がかかりましたが、完成です!!

今回は台詞の表現の仕方を工夫してみましたっ!

素敵な本家様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4410647

閲覧数:498

投稿日:2011/10/23 17:53:13

文字数:3,421文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

  • 関連動画0

  • 芽莉沙

    芽莉沙

    ご意見・ご感想

    まさかのメッセの返しを返すという←w

    では叫びまs((((近所迷惑w
    …失礼しました←
    めりさでおkですよ!自分の名前もじっただけなので、当て字ですのでw

    プロフ見たんですけど、まさかの中一…!
    年下でこの文才って……。あ、どうしよう…、目から水が…(ぇ;

    あのー…こんなやつで良かったら友達になってくれまs(((黙

    ななななんか失礼しましたー!(テンパりすぎ;;

    2011/10/25 18:08:48

    • 姉音香凛

      姉音香凛

      まさかのメッセージ返しに返すt((おいw

      あ、どうぞどうぞ、思う存分叫んd(((やめなさい
      いえ、大丈夫ですよー もうなんでもありなので←
      お、合ってましたかっ! なるほど...

      見てくれたんですかっ! え、まさかって何ですk・・・
      いやいや、全然だめだめですよーw 水てww 泣かないでくださいっ!((((;´゜Д゜)))

      あ、もちろんおkですっ! むしろこっちがなってほs()ry

      あわわ・・・落ち着いてください!ww

      2011/10/26 17:46:08

  • 芽莉沙

    芽莉沙

    ご意見・ご感想

    いやぁぁぁぁあ!!(((何;

    す…すみません;;取り乱しました←
    初めましてでスミマセン、芽梨沙と申します^^
    ちょっとラストに感情移入してしまいまして…←
    にしてもお上手ですねっ!冒頭の仙女が企む所とか、引き込まれる感じがあって素敵でした///

    突然ですみません(オイ
    お邪魔しましたー><

    2011/10/24 18:23:40

    • 姉音香凛

      姉音香凛

      お、おぉ・・・w 少しびっくりしましたww

      あ、大丈夫ですw むしろ大声で叫んじゃってくだs((それはだめだろw
      初めましてですねっ! めりさ、って読むんですかね?←
      おぉおお! 感情移入しましたかっ! なんだか嬉しいです!w
      いやいや、そんな事はないですよ?

      いえ、全然おkですw
      メッセージありがとうございます!

      2011/10/24 18:43:08

  • ☆凛音☆

    ☆凛音☆

    その他

    サンドリヨン、って曲だよね?
    聞いたコトないから今度聞いてみようっと!

    2011/10/23 18:01:23

    • 姉音香凛

      姉音香凛

      >>れっち
      いえいえっ!!

      いやいやぁ、そんなに褒められると照れr←
      そうかぁ? 私なんてまだまだだよっ!
      そ、尊敬されたああああああ(ry

      ありがとっ! 私も尊敬してるよっ!


      >>凛音

      そうだよー!!
      お、ぜひぜひ聴いてみてくれたまえ←

      2011/10/24 18:09:03

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