「レン! 見て見て! ハトがいるよ!」
「……あぁ、うん。そうだね。向こうにはトラとかポニーとかいるんだけどね」
「あ! アヒルもいるよ!」
「ほんとだ。……向こうにはゾウとかうさぎとかいるんだけどね」
「レンレン! あっちに売店あった! 売店行こう!」
「うおっ!? ……ちょ、引っ張るなって! リン!」

俺とリンは今、動物園に来ている。
そう、動物園に。
マスターが知り合いに入場券をもらったとかで、マスターと俺とリンの三人で来たのだけど。
初めてきた動物園。リンのテンションが妙な方向に上がっていき、我先にとずんずん動物のいない方へ進んでいく。
動物の【いない】ほうへ。
仕事で疲労しきったマスターは早々のリタイアを決め、俺達二人分のお小遣いが入った財布とマスターの携帯番号が書かれた紙を俺に託し、満面な笑みを浮かべて俺達を見送った。


……アイツ、最初から全部俺に押しつける気だったな。


「あ、ねえねえ。レン、鯉のエサだって」
「ふーん、50円?」
「私やりたい! レンもやろう!」

テンションの上がりきったリンを止める方法なんて知るはずもない俺は「仕方ないなぁ」と、鯉のエサを二人分購入した。
無邪気なリンの笑顔に、「動物園にきたのに動物見ないのかよ」という当初の突っ込みも口をつぐむ。
リンが楽しいなら、それでいいか。


鯉に餌やりできる位置に行くとすでに多くの鯉と(なぜか)カモがスタンバっていた。
カモは自重すべきだと思うのだが……VOCALOIDといえどさすがに鳥類と話を交わすことはできないので成り行きを見守ることにした。
リンは餌の入ったカップから少し掴むと

「とぅっ!!」

勢いをつけて、上投げで水面に餌を叩きつけた。

「ちょ! ええぇえ!?」

なぜ上から投げたし!

叩きつけられた餌に鯉とカモが必死に食らいつく。
俺らは鯉の餌を買ったはずなんだがな……。
餌を求めるカモと鯉の群れが必死すぎて……なんか怖い。

俺が驚いていることを気にも留めず、リンは同じく上投げの遠投をくりだした。

「ちょ、なんで遠くに……?」
「なんかカモがこっちにきそうで怖かったから」

少し怯えた顔でリンがのたまう。
リンの思惑通り、カモたちは遠くに散った餌を求めて俺達から離れていく。
それを確認したリンは「よぉしっ!」とガッツポーズに力を込め、再び【上投げ】で近くの鯉の元に餌をほうった。

「やっぱ、餌やるなら鯉だよね」
「……そうだね。って、上から投げるなって。下から投げてやって」

俺の言葉を無視してリンは楽しそうに上から投げ続けている。
そして、カモが近づくたびに遠投を繰り出してはカモの接近を拒んだ。

「やっぱ鳥より魚だよね」
「……ああ、そう」

良い笑顔で嬉しそうに話すリンに、俺はそれしか言えなかった。


まぁ、リンが楽しいんならそれでいいや。……ね?



(でも、ほんと。魚っていいよね!)
(……そうか?(あの餌を求める姿を「いい」とは思わないけど))
(見るのも、……食べるのも)
(お前。マジ、ないわ)

 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

閑話~鯉の餌やりってなんか楽しいよね~

後半ノンフィクション。
リン→私
レン→妹
あの時の私のテンションは今思うと異常ww
鳥類は自重すべきと思うんだ。
ちょこっと加筆修正しました。

閲覧数:143

投稿日:2010/07/09 22:58:05

文字数:1,287文字

カテゴリ:小説

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    欠陥品

    ご意見・ご感想

    鯉の餌やりは、時間がたつにつれどんどんカオスなっていきますねw子供の時は、あの群がりようが怖かった…(汗)
    って、もう少し優しく餌はあげてくださいwwww

    2010/07/10 09:14:17

    • 久遠@御用の方はメッセお願いします。

      久遠@御用の方はメッセお願いします。

      鯉の餌やりすっごい楽しいですよwあの群がりよう、確かに怖いですよね!
      でも怖がるよりも餌を投げる楽しみのほうが強いっていうw←

      サーセンw下から投げたら池に届かなかったんで、ついwwwそしたら暴走してました←

      2010/07/10 12:44:32

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