中学二年生の春、小鳥遊ヨミは宵闇の中、一人街を眺めていた。

ヨミ「寒い…」

そこに着いたときにはまだ夕暮れだったが、今ではすっかり日も落ち、丸い月が空を支配している。
衣替えも迫る時期とは言え、辺りの空気は冷えていた。
彼女のいる場所は住宅地をやや外れたような場所であり人通りも少なく、街灯も曲がり角に一つあるだけで。
そういう意味においても辺りは冷えていた。

ヨミ「…、…」

手の中に収められていた携帯電話を開いて見るが、そこにはメールも着信も表示されてない。
彼女は待っていた。しかし、部活の先輩には用事があるからと言ってあった。
彼女が普段家に着いているような時刻に指しかかろうとしていたが、特に何の連絡がなくともおかしくはない。

ヨミ「けど…」

ヨミの視線は携帯のストラップに移る。
黒衣マト、転勤を繰り返しそのことにも慣れて、感情を上手く出せなくなってしまっていたヨミに出来た大切な親友。
青い星とチェーンのストラップは彼女から貰ったものだった。

???「可愛いストラップね」

ヨミはその声に反応して、視線をストラップから上げる。
そこには同世代の女の子が立っていた。
その少女の肌は血の気を感じさせないほど白く、対照的に特徴のある黒衣に身を包み、頭には角、背中には羽が生えている。
ヨミは思わず呟く。

ヨミ「・・・私?」

しかに何より特記すべきことは背丈、スタイル、顔のどこを取ってもヨミと瓜二つということである。
黒衣の少女が口を開け、ヨミと同じ声で話しかける。


???「三角、部分的に当たりだけど、ハズレ。私はデッドマスター。死神みたいなものよ」
ヨミ「死神・・・・?」

自らを死神と名乗る少女を目の前にしてヨミはただ言葉を繰り返すだけで、その意味を咀嚼出来ていなかった。
デッドマスターはそのままのトーンで彼女にさも当然であるかのように問いかける。

デッドマスター「あなた、そこから飛び降りる気だったでしょ」
ヨミ「っ!?」

デッドマスターはヨミの背後を指さした。
ヨミがいたのは見晴らしの良い坂道のカーブであり、カードレールの先は崖となっていた。
デッドマスターはヨミがその崖から飛び降り…自殺するつもりだろうと言ったのだ。

ヨミ「ど、どうして・・・?」
デッドマスター「そうね、私がそういうモノだからとだけ言っておきましょうか」

ヨミは目の前の少女を見、恐れを感じていた。自分を迎えにきた死神なのではないかと。
嫉妬心から部活の先輩に嘘をつき、大事な親友を試している自分を。
ヨミの心情を察してか、デッドマスターは嘲る。

デッドマスター「安心なさい。私があなたに手を下すことはないわ、ちょっとあなたを使わせてもらいたいだけよ」
ヨミ「・・・つ、つかう?」
デッドマスター「同調するといった方が正しいのかもしれないわね」

言葉の意味を捉えきれないヨミにデッドマスターは語る。

デッドマスター「私には【悪を演じること】という役目があってね、私が【正義を演じるもの】に勝つと【悪が正義に勝つ】ということが起きるわ。その勝敗を期すためには【悪と正義の間に揺れる拠代】、今回はあなたね、それが必要となるわ」

ヨミ「・・・拠代になった私はどうなるんですか」

恐る恐る訪ねるヨミ。

デッドマスター「予測でしかないけれど、【悪たる私】が勝てばきっとあなたはそこから飛び降りる。何も変わらないわね。正義が勝てばまた別のことが起きるはずだけれど、そっちは予測もつかないわ」

ヨミにとっては何も変わらない。もしもマトが何日かここに来なければ、ガードレールを跨ぎ彼女のお気に入りの場所から身を投げ、死を憂いて貰おうというのがヨミの描いたシナリオだった。

デッドマスター「協力してもらえるかしら?」
ヨミ「・・・分かったわ」


デッドマスターがヨミに手を差し伸べる。
ヨミが彼女の手を掴むと、彼女の身体がヨミ吸い込まれるような、あるいはヨミ自信が彼女の吸い寄せられるような感覚におち。
次の瞬間、彼女は同調しデッドマスターと為った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

アニメ「ブラック★ロックシューター」の一部を妄想で書いてみた

駄文散文失礼しました。

ブラック★ロックシューターはかなり説明が省かれているカンジのアニメでしたね。
こういう二次創作?を作らせたいがためにわざと省いたんじゃないかってくらいに。

映像と音楽はよかったと思いますけど。

閲覧数:145

投稿日:2010/11/27 22:59:20

文字数:1,691文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました