そのころ。高野と木下は会っていた。人目を忍ぶように人があまり来ない所を選んでいる。
「…で、三人で何を話したの?」
「人間関係の話を色々とな。俺たちの関係もちょっとだけ話に出した」
「あなたは大切な後輩をよっぽど困らせたいみたいね。そんな話、万能な解決策なんてないわ」
突き放すようにいう木下。
「…あいつだって間抜けじゃねえ。それ位考えられるさ、安田教授からもアドバイスをもらったみてえだし」
「…」
「万能な解決策がねえからといって、考えないのは思考放棄だぜ」
「…考えても出てこないかもしれないわね」
皮肉めいた感じで木下がいう。
「それより、あなたも私と別れた方が良いわよ。私みたいな足手まといとつきあって、何が面白いのかしら?」
そのこたえにため息をつく神波。
「…それで、私に何の用よ?」
「折り入って頼みてえことがあるんだよ」
高野の頼みにため息をつく木下。
「私みたいなPとして失格…」
それ以上を言うことができなくなった木下。高野が自らの唇で彼女の唇をふさいだのだ。
「…!」
その高野の行為に目を見開く木下。しばらく高野のなすがままにされる。しばらくすると、唇を離す高野。
「…お前の自虐は聞き飽きたぜ」
「…あなたは、いつも強引ね」
「こうでもしねえとお前はいつまでも自分を傷つけることしかいわねえ。そうだろ?」
「…」
完全に木下の言動を見通している高野。そして木下を抱きしめる。
「それによ、俺と別れた後はどうする気だ?支えてもらうあてはあるのか?」
「!!」
再び目を見開く木下。そんな木下を少し力を込めて抱きしめる高野。
「…俺の前位は構えなくて良いんだぜ」
木下の耳元で優しくささやく高野。その言葉に、張り詰めていた何かが切れたのか、堰を切ったように泣き出す木下。周囲を見て、木下の顔が見えないように姿勢を変える高野。木下の泣き声はそれほど大きくはなかったが、それを聞きつけて誰かがやってきても、木下の顔は見えないだろう。そうして、高野は木下が泣き止むまでずっと彼女を抱きしめていた。
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