かっこ良く登場なんてガラじゃないんだよね。ほら、僕まだ子供だし?だけど適合者になって、変な呪いみたいなの掛けられて、怖がって逃げ続けて、僕の後ろに沢山の涙が積もってた。僕のせいじゃないって言うのは簡単で楽だったけど、それでもどっかで思っちゃったんだ…。

「ねぇ、僕も役に立てるかな?」

何が出来るのか今も良く解ってない。何て言葉を紡げば良いかとか、システムとか、ややこしい事ばっかり。なのにどうしてかな?クロア兄ちゃんが無事で、鳴音お姉ちゃんも怪我してなくって、震えながらだけど逃げずに此処に立っていられる事がすごく嬉しい。

「ヤクル!」
「鳴音さん!大丈夫ですか?!」

わっと人が集って来て思わず膝がカクンと折れた。駄目だな、こんなんじゃ。まだまだ僕かっこ悪い。なんて少し溜息を吐いた時、目の前に倒れていたマント姿がむくりと起き上がった。一瞬皆に緊張が走ったけど…。

「痛ってぇ…何なんだよ一体…?」
「…王子様兄さん?」
「妙な呼び方するな!」
「やったぁ!!戻ったぁー!!」
「王子様復活ー!!」
「は…?」

ぽかんとしてるゼロ兄ちゃんをよそに喜んだ。変なの…前の僕なら家族以外が無事でもどうだって良かったのにな…。

「――つまり、俺は暴走してた訳だ?」
「そうそう、俺蹴られて大変だったんだから。」
「悪い、覚えてない…。」
「ごめんなさい、システム事故については謝るわ、だけど時間が無いわ、三人共聞いて。
 ヤクル君は聖螺ちゃんが見付かるまでイベントの一般客を守って、広域範囲になると
 思うけどお願い。」
「了ー解。」
「それから二人は暴走中の言魂の再起動…つまり…。」
「どうやれば止まるとか無いのか?出来れば女の子殴ったりはしたくないんだが。」

それは僕も同感だった。さっきのゼロ兄ちゃんみたいになっていたとしても女の子叩いたり撃ったりは遠慮したいよね…。と、皆の視線が僕に集まっているのに気が付いた。

「お前確か『分析』出来たよな?」
「え?うん。だけど僕は守る役で…。」

僕の話を聞いてるのか聞いてないのか、兄ちゃんたち二人は眉間にしわ寄せて小声で何やら相談を始めた。そして結論が出たのかまた二人でこっちに向き直った。

「良し、ヤクル、お前ここいら一帯を『分析』しろ。文字化け来ても暴走適合者でも
 元に戻す言葉が判ってるなら多分行ける。」
「えぇっ?!ちょっと!そんな勝手に決めないで!一般客に万一怪我でもさせたら…!」
「大丈夫、その時は王子様が謝れば何とかなる!」
「そう、王子様があやま…え?!俺?!」
「有効的ではあるけど、でも…。」

何かおねだり視線で見られてる。普通それ僕の役目なのに!

「どっちでも良いよ、疲れるの同じだから…。」

大丈夫かな…?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-101.大丈夫かな…?-

閲覧数:77

投稿日:2011/05/08 04:22:54

文字数:1,155文字

カテゴリ:小説

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