「ここの扉から中に入れる・・・・・・。」 
 両手を上に上げたまま、小さく喋ることのみを許された兵士が呟いた。
 その兵士の前には、小さな鉄製の扉がある。
 「その先から、セキュリティを管理している部屋は。」
 俺は兵士に最後の質問を押し付けた。
 「知らん・・・・・・俺達警備の連中はそんなことまでは知らん。」
 「・・・・・・分かった。」
 ここからは兵士を捕まえて尋問し、曖昧な答えを吐かせるより、大佐に明確な情報を貰ったほうがいいだろう。
 「さぁ、撃つなら撃て・・・・・・!」
 兵士の口調はほぼ諦めている。
 俺は黙ってボルトガンの銃口を兵士の後頭部へ押し付けた。
 「ッ!!」
 電流が兵士の体内を駆け巡り、兵士は一瞬硬直した後、その場に倒れた。
 俺はその体を駐車してあるトラックまで引きずり、下に隠した。
 そして、兵士が言っていた鉄製の扉を、ゆっくりと開けていった。
 扉が開け放たれた瞬間、身の毛もよだつ空気が、一瞬俺の体に押し寄せた。
 なんだここは・・・・・・。
 そこは、風前の灯ともいえるほど微かな蛍光灯で、やっと視界を確保していられるほど薄暗く、また何とも例えがたい、不気味な空気が通路を包んでいた。
 ここから本当に目的地までたどり着けるのだろうか?
 まさか、今の敵兵は俺を騙したんじゃないのか。
 とにかく、俺はその中へ足を踏み入れた。
 スニーキングスーツで覆われていない顔の皮膚が、通路に立ち込める冷気に震えた。
 俺は大佐に連絡を入れた。
 「大佐・・・・・・施設内部に潜入した。」
 『はい。こちらでも確認しました。』
 「ここから、何所へ向かえばいいのか分からない。そちらのレーダーで、俺の位置と目標地点の距離は分かるか?」
 『ええ。だいぶ近いところにあるようですね。急げばすぐにたどり着けるんじゃないでしょうか。』
 どうやらさっきの兵士は何かを企んでいたわけではなさそうだ。
 「そうか。こちらではレーダーが使えない。目標までの指示を頼む。」
 『任せてください。しかしタイトさん。そこはもう施設内部です。警備の差は、今までとは雲泥の差ですよ。特にセキュリティーを管理する部屋など、相当厳重な警備でしょう。』
 「分かってる。」
 『先程、タイトさんは敵兵を尋問し、気絶させたのちにトラックの下に隠しましたね。あのように、敵を一人づつ始末し、どこかに隠しておくのも手の内かもしれません。』
 「骨が折れるな・・・・・・。」
 『そこで見つかれば、間違いなく命はありません。慎重に、かつ迅速に行動してください。万一見つかった場合は、冷静に隠れる場所を探すか、追跡の手を逃れてください。』
 「分かった。」
 『とりあえず、その通路に敵の姿は確認できません。突っ切ってくれてもかまいません。その通路を抜けると、少し倉庫に出ますからそこについたらこちらから連絡を入れます。』 
 「了解。」
 指示されたとおり、俺は薄暗い通路を突っ切った。
 その不気味な場所の突き当たり、大佐が倉庫に続くと言っていた扉に差し掛かった。
 「大佐。この先に敵の姿は?」
 『四名います。ですが扉の前は無防備です。コンテナや貨物で見通しは悪いので、上手くやり過ごせるでしょう。』
 「分かった・・・・・・。」
 俺はドアノブを掴み、きしむ音がしないようにゆっくりと回した。
 ドアの先にボルトガンを突きつける。
 確かに、巨大なコンテナが等間隔で積み上げられており、見通しは悪い。
 高い天井からは、スポットライトが無数に倉庫を照らしている。
 敵は・・・・・・見えないが、足音はする。やはり、四人か。
 俺はコンテナからコンテナに移動し、敵の足音を聞きながら、時にはコンテナに張り付き覗き込みながら、敵の背後を通過していった。
 無論、自分の足音に気を縛りながら。
 僅かな音でも、この無音で、しかも音が響きやすい場所では絶対に立ててはいけないのだ。
 向こう側の扉が見えた。もう少しだ。
 その扉の前に到達した俺は、迷わずドアノブをひねり、更に奥へと侵入した。
 すると、今度は眩しい照明が目に入った。
 白く、タイル張りの通路。
 横幅が広く、通路は延々と先に伸びている。
 ここは・・・・・・・。
 『タイトさん。どうやら目標は意外と近い場所に、しかももう一つあるようです。』
 大佐から、思いもよらない言葉を聞いた。 
 「もう一つ?どういうことだ。」
 『そこから左側百メートル進んだ場所に、その施設に電力を供給している変電室があります。ですが変電所といっても、大き目の部屋から供給のケーブルが外の供給塔と直結しているという簡単な構造です。ですからそこを破壊すれば、セキュリティーも同時にダウンするでしょう。』
 「なるほどな。たとえこの施設全域をカバーしていなくても、セキュリティに電源が届かなければ、施設全てのセキュリティがダウンする。」
 『そういうことです。』
 「なるほど。手間が減ったようだな。」
 『ですが、決して油断しないでください。変電室には、作業員と警備兵の両方がいます。身を隠す場所がありますが、人数が多いので自分の気配に気をつけてください。』
 「ああ。」
 『電源を無効化させたら、すぐにご連絡を。こちらから上空で待機している空挺部隊に連絡し、予定よりいち早く降下、そこを制圧してもらいます。』
 「分かった。」
 通路の左側を見ると、両開きの大きな扉が微かに見えた。
 あそこから、変電室へ入れるのか。
 ここには警備はない。ここも、一気に走り抜けられる。
 一応、ボルトガンを構えながら、俺は扉の近くまで歩み寄った。
 近づくにつれて、機械が騒々しく作動する音が、扉の向こう側から響いてくる。
 そして、扉の右側に張り付き、音もなく僅かに扉を開き、室内が見えるほどの隙間を作り、その中をうかがった。
 コンクリートの部屋に黄色い機械類が多く設置されている。
 その一番奥に見える、巨大な装置。あれが電源の要のようだ。
 敵は・・・・・・ここから見えるだけでも、兵士が三人。
 他に、水色の作業服を着ている作業員が四人。
 なんて数なんだ。
 だが、こちらには距離が遠い上に、機械の作動音で聴覚は聞かないだろう。
 俺は思い切って、素早く扉を開け放ち、中に侵入した。
 そして、即座に設置してある大型機械に身を隠した。
 よし。まだ誰にも気配を悟られてはいない。
 機械から少し顔を覗かせると、丁度例の電源装置の制御版らしきパネルが目に付いた。
 あれを破壊すれば、この施設の一部分の電源がシャットダウンされ、同時にセキュリティーも落ちる。
 そうすれば、空挺部隊が施設周辺に降下し、一気に制圧するはずだ。
 それと同時に、ソード隊による空爆が開始される。
 そのためには、まず俺がここでこの電源を破壊しなければならない。
 だが、人が多い。
 ではどうするか。
 俺はボルトガンを抜き、無防備な作業員に電撃を放った。
 「おい、どうした。」
 出血していないため、兵士には眩暈で失神でもしたように見えたのだろう。
 兵士の一人が、突然倒れた作業員に近寄った。
 そして、兵士の手が作業員の方に触れた瞬間、二発目の電撃がその兵士を襲った。
 「何だ!」 
 「敵か?!」
 残った二人の兵士が、銃を取り出した。
 ボルトガンの銃声は機械音で全く聞こえない。
 その上、二人の兵士は俺に対し完全に背を向けている。これ以上の好機は他にない。
 続けざまに二発。兵士二人はその場に崩れるように倒れた。
 これで、この部屋に俺の脅威はいなくなった。
 俺は隠れていた機械から立ち上がると、堂々と例の配電盤に歩み寄った。
 「ひゅぅいいぃッ!!」
 突然現れた俺を目撃した二人の作業員が、奇怪な悲鳴を上げ、逃げだそうと出口の方に駆け出した。
 すかさず作業員の一人に電撃を浴びせる。
 「たッ、助けてくれ!!」
 もう一人の後頭部にも、蒼い電撃が迸った。
 二人の作業員を始末し、無人と化した配電室。
 俺は配電盤に向かい、ボルトガンの銃口を向け、引き金を絞った。
 その瞬間、凄まじい破裂音、目に見えるほどの電気が配電盤をのた打ち回り、盛大に火花を飛散させた。 
 同時に、今まで騒々しい作動音を響かせていた機械類は全て沈黙し、照明の光が消え去り、室内は暗黒に包まれた。
 第一任務目標・・・・・・。
 完了。
 『タイトさん。アナタ撃ちすぎ。』

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SUCCESSORS OF JIHAD 第六話「第一目標」

弾が拾えるからって、銃器に頼りっぱなしの人、いません?(何の話?)

閲覧数:168

投稿日:2009/05/25 23:42:13

文字数:3,505文字

カテゴリ:小説

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