エイプリルフール。

それは、年に一回の「嘘つきになれる日」


「お姉ちゃん、今日ウソつきの日だね」


新品のランドセルを背負い
てとてとと走りよってきて弟は言った


「そうだね」


カレンダーは先日めくった
四月一日には大きな赤い丸がされていた。


つんつんと服を引っ張ってくるので見下ろすと
満面の笑みで弟が口を開いた

「ボクね、アソパソマソなんだー」

「嘘でしょ」

びしっとあたしに人差し指を向けて弟は叫んだ

「えいぷりーるふるー!!」

「違うわよ」


返事も聞かずに弟は嬉しそうに台所へ走っていった



今日は、嘘つきの日

そう、今日だけ嘘を許される日



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

四月一日は登校日
こんな学校ここしかないと思う

いつもと同じ道で
隣にはいつもと同じように貴方がいた


「四月しょっぱなに登校日がある学校ってここ以外どこもないよな」

ネクタイを緩めながらだるそうに貴方はぼやいた

頷いた後
日付を心の中で確かめた

「あ、あのさ、」


今日だけだから


「何?」


いつもみたいに笑顔を向けてくれる貴方に言った


「好きだよ」


「え?」


戸惑う姿に間髪いれず


「エイプリルフール!!」


きょとんとした直後
「あはっ」て貴方は笑った

「冗談か、びっくりした」

いつものように笑った

「そうだよー」

あたしも笑った




知ってた?

イギリスは
午前までしか嘘ついちゃ駄目なんだよ?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「お姉ちゃん、今日ウソついた?」

家に帰ると弟が玄関で待っていた
と、思ったら先ほどの質問である

「ついてないよ」

靴を脱ぎながら答えた

「えー、もったいないよー」

ふと弟を見ると
ランドセルを背負ったままだった

「・・・やっぱついちゃったかな?」

ランドセルには
一年生の証である黄色いシートのようなものが被せられている

「そうなの?」



ウソって言う嘘ついちゃったよ



「うん」

「そっかー!えいぷりーるふるーだね!」

「だから違うわよ」



「お姉ちゃんもえいぷりるふるーしてたって!!」



弟はやはり返事を聞いていなかった

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

嘘ホント 短編小説

こんにちは、ピアプロに今だなれていないくだこです。
今日はエイプリルフールですね^^
ずっとエイプリールフールだと思ってました・・・

閲覧数:92

投稿日:2011/04/01 11:37:34

文字数:936文字

カテゴリ:小説

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