笑いながら黒い塊が生き物の様に飛んで来る。クロアお兄ちゃんも流船も避けるのが精一杯みたいだった。

「二人共!この線の内側来て!」
「うわっ!来た!」
「うろちょろ逃げないで!私は先輩を助けるんだから!」
「イコ!待て!話を…うわわっ?!」

聞く耳持たずも良いとこで羽生えたお姉ちゃんはデタラメに黒い塊を飛ばしてる。これってやっぱり当たったら滅茶苦茶痛いんだろうな…。

「聞いてくれ!言魂では怪我の治療は出来ないんだ!騙されてるんだよ!」
「嘘!嘘だよ!あの人は治せるって言ったもん!芙花先輩を試合に出してくれるって
 約束したもん!」
「言魂で治せたらあの時俺が治してたよ!」
「嘘吐き!嘘吐き!治るもん!治るって言ったもん!」

まるで雨の様に降り注ぐ塊に防御壁すらミシミシひびが入ってる。

「だ、駄目だ…壁が持たな…!」
「ヤクル!」
「二人共伏せろ!」

防御壁が壊れるのと同時に壁に叩き付けられた。背中を打って息が出来ない。ヤバイよ、このお姉ちゃん完全にキレて…。

「流船!おい!流船!しっかりしろ!」
「え…?」

うつ伏せで倒れてる流船の背中が赤黒く染まっていた。手の平にべったりと赤い血が付いてる…僕の…血じゃない…。

「うわっ…!わぁああああっ!!血!血がいっぱい…!ひ、人殺し!!」
「ヤクル!応急処置を!早く!」
「やだ!やだよ!恐いよ!血が…手に血が…!うわぁあああっ!!」
「ヤクル!クソッ…!コトダマ『応急手当』『蕕音流船』ロード!」

必死で手に付いた血を拭った。鉄臭い…赤いのが取れない…嫌だ!嫌だ!こんな所で死にたく無い!嫌だ!

「流船?流船!…血が…ヤクル!頼む手当てを!俺じゃ追い付かない!」
「あ…ああ…!嫌だ…!嫌だぁっ!!」
「ヤクル!しっかりしろ!このままじゃ流船が…!うぐっ…!」
「嘘吐きは皆死んじゃえば良いんだ…。」

死にたく無い…!死にたく無い!死にたく無い!

「うわぁあああああ!!」

自分の声が耳に響く程叫んだ。だけど痛みも何も無くてうっすら目を開けた。

「…蝶々…?」

誰…?服は流船だけど…真っ赤な長い髪…それに声が違う…。

「逃げて…。」
「え?」
「彼女と戦っちゃ駄目だ…逃げて…。」

そう言うとその人はお姉ちゃんもクロアお兄ちゃんも何処かへ転送した。

「逃げて…。」

これは…誰なんだろう…?そう疑問が溢れる中で、トンと軽く付き飛ばされて、次の瞬間には外に出ていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-51.雨の様に降り注ぐ-

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投稿日:2010/11/06 02:52:40

文字数:1,032文字

カテゴリ:小説

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