「貰った!この、裏切り者が!!」
ザッ!
俺は俺の左胸に剣を突き刺した男の首をなぎ払い、剣を引き抜いた。己の剣先にツタウ滴を拭い、鞘へとおさめる。
「俺は死なない。」
俺はそう呟くと、首なしの男に背を向けて歩き出した。赤く染まった白い軍服は徐々に元の色へと戻っていった。
これで何度目だ?俺は自問する。温もりを宿した身体で、声をなくすような失態を犯したのは?もう少し気を引き締めなくては…
リンのためにも…
________________________________________
______________________________
____________________
「王様本気なのですか!」
黒い軍服に身を包んだ俺は、ステンドグラスを眺め俺に背を向ける男に跪いていた。国王に対してだ。
「神は決定を下した。」
「!!」
王の口から出た言葉は俺に電流のような衝撃を与えた。
「我々人間は神を愚弄しすぎたとの事じゃった。確かなことじゃ。神殿は廃墟同然。神々を祭る儀式も数百年と行われていない。わしがどのような弁解をしてももう叶わぬ。神はやってくる。国は滅ぶ。…なれば、神と戦うことを選ぶより他にない。」
王はガラスを眺めながら静かに言い切った。
「…しかし。」
「お前がためらうのも分かる。王国騎士団長レンよ。」
ここで王は振り返り王と俺の視線が始めて交わる。
「お前のためらいを取り払ってやろうぞ。」
「王様?」
俺がよくわからないという声を上げる。
「お前の姉は、今では珍しい巫女らしいな。」
「!!」
俺は目を見開く。俺の動揺は王にも伝わったようだ。言葉を切った王はことさらゆっくりと続けた。
「巫女や神官は人から神への橋渡し役。いわば双方の内通者じゃ。」
「まさか…そんな…」
俺の瞳から涙が滲む。
「その全てを排除するよう、お前の部下に命じた。」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!」
俺は城を飛び出し、城下の自宅へと走った。後には涙が追いかけてきた。
「これが我らの生き残る術なのじゃ…」
俺のいなくなった王室で王はそう呟いた。
城下の俺の家には火が放たれ、俺の部下が…王国騎士団が群がっていた。
「どけ!邪魔だ!」
「だ、団長!」
「この先は危険です!」
「うるさい!どけ!」
俺は群がる騎士団を手当たり次第に殴りつけて、燃え盛る自宅へと入っていった。
捜していた人はすぐに見つかった。奥の居間肘掛け椅子に眠るように座っている彼女の胸には騎士団の紋章の入った剣が突き刺さっていた。
「リン!リン姉さん!姉さーーん!」
俺の叫びは、柱の崩れる音に重なり消えていき、とめどなく流れる涙は炎の熱で消え去った。
家から出た俺は、その場にいた騎士団全員を殺した。腕は俺が一番立つので造作もないことだった。その時だった、天が光り1人の神が光臨した。
「巫女を殺したのはお前か?」
神は弓をこちらに向けて、気難しい顔をして尋ねた。その声はどこか俺の傷をえぐるようで…
俺が姉さんを?大好きだったリン姉さんを?…ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!
「そんなわけないだろ!!」
俺が叫ぶと、どうだろう?その声の前に神は粉々に砕け散ったのだ。
そういえばと俺は思い出す。騎士団の団員試験を受けたときの、王立図書館の古い蔵書の1つに『人は全てにおいて神に劣るが、愛の謳のみは神をも砕く力がある』という一節があった気がする。
剣の腕では王国一の実力を持つ騎士団長…
愛の力では唯一の大切な人を失った男…
…俺は人と神双方を凌駕する力を手に入れたことに気づく。
俺なら今始まり行く戦を止めることが出来る。
いや、そもそも止める必要なんてあるのか?
フッ…
俺は口角をあげて嗤うと、再び元来た道を戻りだした。城に向かって。
孤高の騎士―Lost Destination①―
しばらくぶりです。やっと書きたい曲が見つかりました!
150Pさん(http://piapro.jp/aaa_2009)のLost Destination(http://piapro.jp/t/y0NF)(http://www.nicovideo.jp/watch/sm15271378)を自己解釈たっぷりに小説にさせて頂きました。
PVも曲も初めて見聞きしたときには圧倒されてさっぱり解釈できなかったのですが(駄目じゃん^_^;)聞けば聞くほど想像が広がって、とても楽しい曲でした。
それに見合うだけの物が書けるように今回も頑張ります!
続きはこちら(http://piapro.jp/t/xXxJ)
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