≪第零節≫

「当たり前だろ。もう僕は逃げない。
 彼女を……初音を救ってみせる」

 僕が言うと、

「その言葉が聞きたかった」

 グミは笑って、呟いた。
 そして、

「……特例ですよ。23942回目の部分リセット。3回目になる10月28日です。
 必ず彼女を救ってくださいね。
 もう“特例”は存在しませんから」
「ああ、解っている」

 僕はそう言うと、グミがスマートフォンもといインターフェースを操った。
 と同時にその先端から僕に向かって光が放たれる。

「……せいぜい頑張るがいい」
「随分冷たいんだな」
「……もう役目はないですから、」

 その言葉を最後に、僕の意識は途絶えた。


≪第一節≫

「ねえ! 神威! 起きろ!!」
「う、うわっ!!」

 早速目覚めからスカイアッパー……否、アッパーカットとは恐れ入った。さすが初音。空気読まないキャラNo.1(作者調べ)だけはある。

「やっと起きた。いつまで寝てんの?
 てか絶対今日朝から寝てたでしょ?
 まったくあんたはいつまで経ってもそういう癖が抜けないのよね」

 初音の愚痴愚痴した声が聞こえる。どうやら僕は“もどった”らしい。原理は解らない。まああのインターフェースなるもの(もう名前は覚えられないし、覚えたくはない)で時間を動か(ただし僕だけはそのままに)したんだろうな、とか思っていたが、

「おい、何を考えている。行くよ!」

 なんとあろうことか、僕を引っ張ってどこかへ連れていこうとするのだ。無理矢理である。ルカは眠りながら歩いている。なんと器用なことか。

「わ、解ったから。歩かせてくれ!」
「そ、解ってるならいいのよ」

 そう言って予告なしに手を離した。危ない、危うく背中から固いコンクリートにダイブするところだった。

「さ、レッツゴー!!」

 そんなこんなで行き先の解らない探検が始まった。


≪第二節≫

「ど、どこへ行くんだ?!」
「だーかーらー、あの地下室だってば。あそこは曰く付きの場所って言うし」

 初音はそう言って、僕の腕をずっと引っ張る。あのさ、そこまで引っ張られると僕の腕抜けちゃうんですけど?
 ルカはその光景を見つつ、うつらうつら。あなたは何時間寝れば気が済むんですか?
 そういえば不思議に思うことがある。この光景にグミが居ないことだ。一体彼女は何処へいったんだろう?

「……おかしいわね」

 そう言って初音は急に立ち止まった。僕は初音に寄りかかる形で立ち止まった。


「どうしたんだ?」
「……ほら、おかしいじゃない。
 ここに階段があるはずなのよ。
 地下室へ行くはずの階段が!」
「あれは眉唾ものの七不思議に過ぎないからな……。
 やっぱないんじゃないのか?」
「いや、あるわ! きっとある!」

 そう言って初音は壁の縁に手をかけて、
 ふと、何かに気づいた。

「おかしいわね……。
 どうして、ここに糊付けしたようなあとが……?」

 初音の言ったとおり、そこには“どこから見ても不自然に”糊付けがされたような跡があった。

「なにかしらこれ……」そう言って初音は爪を立てて、その糊付けした壁を勢い良く剥がした。

 ベリベリィ!! と勢い良く剥がれたその壁の裏には階段がたしかにあった。

「……ビンゴね」

 そう言って初音はそそくさと階段を降りていった。僕は頭を掻いて初音の後を追った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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【リレー】僕と彼女の不思議な世界 05 MGR団【前編】

第四章前編です。

第一章:http://piapro.jp/t/i9vG
第二章:http://piapro.jp/t/pZz8
第三章:http://piapro.jp/t/UAV6
第四章 後編:04/23
終章:04/23


いよいよ、最後に向けて展望しつつあります。いや、畳めよ! って突っ込まれるかもしれませんけど。

まあ、気長に首を長ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーくして待ってください。

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投稿日:2012/04/19 17:41:42

文字数:1,423文字

カテゴリ:小説

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