そのころ。
「……ここはどこだ?」
僕は別の世界へと来ていた。
全てが歪んだ、世界。
そして、背景の所々に0と1の数字が描かれている。
「……君か」
声に驚き、振り返ると、
「カイト……だったな」
「ああ。なぜお前がここにいる?」
カイトは傷ついていた。いったい何があったというのだろうか?
「なんで、俺がこんなに傷ついてるんだ、と言いたいんだろう?」
「……別に聞こうとは思わないが、」
「まあ、聞いていけ。
実はここは『プログラム』の捩れらしいんだ。
どういうことかって?
それは俺にすら解らない。なにしろミズキがいないんでな」
「私ならここに」
「うぉお!
なんでここにいんの!?」
「……プログラムが修正される前から居ましたが」
「じゃあ助けろよ」
「もうあなたの部下ではありませんし」
「おいおいおいおい!
だからって義理と人情ってもんが……」
「話が進まないからさっさとしてくれないか?
もう最終話だから伸びしろがないんだよ」
「うわっ。メタ発言。
……そうだったな。話を戻そう。
実は、プログラムの歪みがあったらしい。
たぶん原因は俺らが入ったからだろう。異物として認識されているようだ。
そしてプログラムに歪みがあったら修正を行わねばならない」
「……つまり、どういう?」
僕は何を言ってるか、わからなかった。
「修正とは簡単だ。
異物の排除だよ。オレらは一度“死んだ”のさ。
だけどな、神は『第7次元閉鎖空間外操作情報インターフェース』を持っている。
それって、なんの意味を持つか解るか?
お前は持ってないから解らないだろうが、あれは自分の命をも操作できる。
チートだろう? だが、これはうまく操作すれば誰にだってなれる。
これが神が不死身であるトリックだよ。
グミもリリィもミキも持っているのさ」
「あー、そのトリック聴きたくなかった……」
僕はカイトから淡々と語られる事実に、どことなく耳を塞ぎたくなったのだった。
***
「ところで……一つ聞きたいことがあるわ」
初音はイアに小さく呟いた。
「? 何かしら?」
「どうして、ルカを消したの? しかもあの中には一般人も混じっていたはずよ」
「私は言ったはずだ」
イアは小さく笑って、
「人は“神に成り代わろうとしている”とな」
***
そのころ、リン。
「……なんだ。この真っ暗な空間は……」
「全て、タイムカプセルが……」
彼女は考える。
タイムカプセル。
彼女はそれを“埋めたはずはなかった”。
彼女は、夢を見て、それを手に入れようとした。
彼女は、何も思うことはなかった。
ただ、昔から考えていることだったのだ。
ヒトは神へとなるべきなのだ、ということに。
彼女は街々で知る神と呼ばれる存在に怒りを募らせていた。
なぜなら、もし神という存在がいるならもうこの世界は救われているはずなのだから。
「そうか……。
神に触れずに、ダメなのか……。
所詮人間は……、なるほどね」
そうして、彼女は笑った。
乾いた笑い声が、暗闇に響いた。
***
「……どういうことだ?
つまり、あの一般人が……神になろうとでも?」
「ああ、そういうことだよ。
私も疲れた。全てを教えるにも時間が足りない。
あのリセットのせいでな」
「あのリセット?」
「……はぁはぁ……。
やっとたどりついた……」
初音とイアの間に入るように一人の人間がやってきた。
緑の髪をした少女。
「……グミ。なぜここに」
「ははっ。ちょうどいい。
彼女から説明してもらおうじゃないか。
2回ルートが生まれた3日間を」
イアは笑って、言った。
***
「ところで、だ。カイト」
「ああ。どうした?」
「なんで、僕はここにいるんだ? ここって、学校だよな?
今まで、神の箱庭にいたんじゃなかったのか?」
「まぁまぁ、いいじゃないか。
ところで、今は何日だ?」
「ん? 11月1日じゃないのか?
……いや、違う。この雰囲気は、」
「隠れろ、神威」
僕が何かを言おうとしたらカイトに掴まれ廊下に思わずずっこけた。
「なんだよ、一体!」
僕が苦言の一つでも言ってやろうと思ったら、カイトは口に手を当て、静かにするよう促した。そして、僕が静かになるのを見計らって指さした。
「見ろ。あそこに立っている人間を」
カイトの指の先にいた人間、そこにいたのは、
「……初音……?」
初音が、そこにいた。
つづく。
――
予告
――
神威がたどり着いたのは10月28日だった。
そこで語られるMGR団結成の真相とは……?
次回まで楽しみに待っててください。
【リレー】僕と彼女の不思議な世界 05 邂逅
第二章
第一章:http://piapro.jp/t/i9vG
第三章:03/15予定
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BPM=156
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