ずんぐりむっくりのキャラクターが、画面の中で暴れまわっていた。最近話題の、よくわからないアニメである。
「だから何故俺の部屋に来て見る」
「いや、電波がさ」
「電波なのはお前だ。家隣同士で、電波の違いなんかねぇだろ」
 言いながら、グミヤはグミが好きなクッキーを持ってきて、なんとなしに隣に腰を下ろした。
『ヘイ! エブリバーディー! 今日も僕らの時間がやってきたよ!
 今日も楽しく、レッツ☆スタディイングリッシュ!」
 ピンク色のウサギが、死んだ眼でファンシーな声を上げた。
「…子供向け番組じゃねぇか…」
 呆れながら、グミヤがいった。
『今日のシチュエーションは、【彼女がやたらビーフストロガノフの作り方をきいてくる】だよ!』
 どういうシチュエーションだよ…!
 本当にこれ、子供向け番組か? グミヤがそう思ったとき、謎のシチュエーションでアニメがはじまった。
『太郎くん、ビーフストロガノフって好き?』
『花子ちゃん。うん、食べたことはないけど、好きだよ』
『じゃあ、作ってあげるね』
『わぁ、ありがとう』
『でも、ビーフストロガノフってどうやって作るのかしら?』
『知らないのかい?』
『ええ、教えてくれる?』
『ごめん、僕も知らないよ』
『ねぇ、教えてよ』
『しらないってば』
『ねぇ、太郎くん、教えて』
『しらないよ』
『太郎くん、おしえてったら』
 ピンクのウサギの太郎と、白いウサギの花子の会話らしいが、これはひどい。大体、英語の番組で太郎と花子って…。しかも、やはり謎のシチュエーション。
『太郎くぅん』
『You may do it however you like!』
 太郎がキレた。グミヤは一瞬絶句して、それから立ち上がった。
「突然英語かよ! しかもやたらレベル高! 何これ、俺ならったことねぇぞ!」
「ぐみやん子供番組相手に本気になることないのにー」
「いや子供番組のレベルじゃねぇだろ! 突込みどころ多すぎるわ!」
 これはひどい…。
 突っ込みにはなれているはずのグミヤでも、突込みが追いつかない。

 次の日、グミヤの話を聞いて、
「――ひどい…」
「本当に…」
 リントとレンがため息混じりに言った。
「ああ…。洗脳電波でも出てるんじゃねぇかと思うほど怪しい番組だった…」
 すっかりやつれた様子のグミヤが言った。丸一日中、グミに付き合わされてあの妙な番組を見せ続けられたのだそうだ。
 流石に同情を禁じえない。
「お前も苦労人だな…」
「おう…。惚れた弱み…というか、保護者としての責任と言うか…。放ってはおけねぇし…」
 グミヤは横になった。空がグーンと広がっている。
「もうホント、天然を治す薬が欲しい」
「んなもんあるなら俺も欲しいわ」
「俺だって欲しいっつの」
 三人とも、ある種天然に短い青春を持っていかれた、可愛そうな中学二年生たちである。軽く笑って、三人は合わせてため息をついた。

 天然を治す薬とか、本当にあったらいいのに。
 そうしたら、レンカだってもっとしっかりしてくれて…。
 リンだってもっと常識人に…。
 グミだってまともに…。
 三人は顔を見合わせた。

「…やっぱ俺、いいわぁ…」

 三人とも、まともになった女性陣を想像したらしい。
 しっかり者ではきはきとしたレンカと、ボケのない大人びたリンと、グミヤの助けを必要としないグミ。そんなの、あいつらじゃない!
「なんか失礼なこと考えてない?」
 リンが顔を出した。特に驚いたのはレンで、ひっくりかえったこえで、あわてて
「なんでもない!」
 後ろからグミが入ってくる。
「うっそ、絶対あたし達の悪口言ってたでしょ」
「お前の悪口なんかついても、馬鹿はなおらねーよ」
 つんと澄まして、グミヤが答えた。
「リント君…、私の悪口も…」
「言うわけねぇだろ!」
「そ、そうだよね! ごめんなさい!」
 いつものリントとレンカのやりあいになる。実際、ここが一番ほほえましいかもしれなかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Some First Loves 8

こんばんは、リオンです。
結構ギリギリの投稿ですみません!
グミは不思議ちゃんだから、不思議なものが好きだろうと勝手に思ってます。
ボカロの女の子は基本的に不思議ちゃんがデフォ。
男の子は苦労人がデフォ。
かぐみねがきゃいきゃいしてる学パロ読みたいです。誰かかいてください。
おねがいしますorz

閲覧数:758

投稿日:2011/12/09 23:52:55

文字数:1,660文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • アストリア@生きてるよ

    子供向けじゃねぇwwどんな番組だwwビーフストロガノフww

    グミヤんドンマイwwでも確かに、あの3人がまともになっちゃ嫌ですね……
    天然だからこそ萌えるんじゃないか!あれは天然どころの話じゃないけどな!!←

    リトレカ微笑ましい……リンレンは騒がしく、ミヤグミはやかましいですね……
    それがまた素晴らしい!!ww

    リン「ちょっと、レン!ご飯の量これじゃ多いよ、もう!自分でよそうから、貸して」
    レンカ「リント君、お掃除もしたし、ご飯作ったから、早く食べちゃお?」
    グミ「グミやん、そんなの見てないで、早くテレビ回してよ。勿論ニュースね」

    ……しっかりしちゃダメ!!今のままでいて!!
    レンカは余り変わらんな……妄想力が足りん、足りんぞ自分!!

    2011/12/10 14:48:33

    • リオン

      リオン

      アストリアさん、返信おそくなってごめんなさい!

      以前、漫画で『ビーフストロガノフ高校』みたいなのを見た気がしたので、以来ちょっとお気に入りで(笑

      天然は大好きだけど、ウチにこられたら少し困るくらいの天然三人です^^;

      リトレカは割合大人、リンレンは子供、ミヤグミは親子みたいな関係が強いかなーと思います。

      レン「リン、おやつだよー」
      リン「太るよ。私いらなーい」
      レン「…(´;ω;`)ブワッ」

      リント「家事、手伝う。…何終わってないんだ」
      レンカ「終わったよ? 全部。一時間くらい前に」
      リント「…」

      グミヤ「英文が解けん…」
      グミ「これはさ、『I asked him』で『私は彼に尋ねた』だから、全体を通すとさぁ…」
      グミヤ「お前って頭良かったんだな…」

      今のままの君が一番だよ! 変らないでいて!(笑
      レンカちゃんは気が弱いだけで実はしっかり者です。おっとりしてるので、天然に見えるだけ。

      2011/12/11 15:21:31

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