武藤紅

水が流れるように 砂が零れるように
雪が溶けるように 岩が崩れるように
止められないものたくさんあるから
たった一つだけ握るよ
失くしたくないものたくさんあるけど
たった一つだけ抱くよ
捨てていい 残りの全部
爪を伸ばして 掌握って
この想いだけ刻み込む
前になんて進まないよ...

跪いたあなたのつむじ
素足で踏みつけるから さぁひれ伏して
地べたに額擦らせて
涙交じりに謝りつくして
真昼間の雑踏
脳の冴える夕涼み
閉じ込められた深夜
夜明け白んだ空
私はいつも一人よ
誰もいつでも一人よ...

聞かせて愛の調べ
ただの綺麗なお飾り止めて
本音のトコロ吐き出して
怖いくらい抱き締めて
虜にさせてよね
壊されてもいいわ
ゾクゾクするくらいね
揺さぶって欲しい
余計な飾りは二人脱ぎ捨てて
脅えたりなんて楽しくないでしょう？...

同じ橙が揺れるの見てる
同じ碧眼が私を見つめる
同じ数字を背負って生きてる
声を重ねる響きあう
共鳴する　音　ココロ
こんなにこんなにひとつなのに
どうしてふたつに生まれてきたの？
俺より丸い輪郭をなぞる
結ばれたリボン唇よせる
細い喉のたいらさを見てる...

もう何も言わずともよい
言葉という言葉は紡がれ
音という音は零れた
思いという思いは語られ
歌という歌は創られた
私が完璧に歌いあげる
もう何も泣かずともよい
楽園という楽園は廃れ
人という人は生まれた
苦行という苦行は行われ...

嗚呼なんだか胸糞悪いわ
そりゃあ私は歌うのが好きで
あなたのかいてくれる曲を歌うのが
楽しくないっていえば嘘だけど
私がイイコだって誰がいったの？
私が可愛いって誰がいったの？
私がいつでも笑顔だなんて
何処のどいつに吹き込まれたの
嗚呼なんだか虫唾が走るわ
そりゃあ私は上手に歌えて...

落ちる音が空を裂くのを
不思議な気持ちで見つめていたわ
此の鼓膜を震わす音が
あなたの元へもいつかは届く？
くるくる廻るぐるぐる惑う
此の音がその胸届くのかしら
くるくる巡るぐるぐる迷う
それだけを糧に進めるでしょうか
言葉はそこまで届かないから
メロディにのせて紡いで歌って...