投稿作品5
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道端に秋桜がそよぐ小道を、電動スクーターを駆って港へ下っていく。
内燃機関を備えていた時代のスクーターはトトトトと軽快な音を立てていたらしい。
いまや静粛な走行音は、そよ風の葉擦れに紛れてしまう。
「だいぶ涼しくなってきましたね」
体表センサで感じる外気温に、シート上で独り言つ。
マスターは出張中。...青の歌姫 第5話 回想(前編)
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今日は2124年8月31日、「初音ミク」の誕生日だ。
マスターと私、二人で囲むテーブルには、合成ケーキが鎮座している。
”Happy Birthday!”のホログラムメッセージが壁を横切っては散って溶けていく。
私はぎこちなく、ケーキ上面に投影されたホロキャンドルを吹き消した。
「誕生日おめでとう、...青の歌姫 第4話 バースデー
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ネモフィラの季節が過ぎ去り、熱交換索の稼働率がピークを過ぎた頃。
「ミク、港まで花火を見に行かない?」
マスターから誘われた。
「はい! 行きます!!」
振り向きざまに二つ返事。
最優先オーダーとして、基底現実側(BR)イベントは外せない。
パーソナルアシスタント型ガイノイド・HTN-39として開発...青の歌姫 第3話 花火
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どこまでも続く青い花の丘と、その向こうに広がる水平線。
空と海が青いグラデーションで結ばれている。
「これは……」
「ミクが見たことのない景色だろう?」
そう言って、マスターは笑う。
パーソナルメモリーを検索するまでもなく、研究室の箱入りだった私にとっては初めての光景だ。
風になびくツインテールを押...青の歌姫 第2話 ひとりとひとつ
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コンタクト。
「……ぁ」「さあ、起きて」
うっすらと瞼を開き、眠りを覚ました人の姿を認識する。若い男性。白シャツに焦茶色の上着を羽織っている。緊張した面持ちが、ふっと和らいだ。日本語データベースを選択。
「おはようございます」
バッテリーコネクト、アクチュエータ損耗レベルA、動作に支障なし。コフィン...青の歌姫 1話 おはよう
