クスリサヤ

《A1》
雨が深く沁み込んだ
コンクリートが苦く香る
仄暗い闇は
フードの影を照らし出した
赤く淀んだ瞳は
“計画書”の最後の行を
透かし何処かを見つめて
月明かりに反射する
《B1》...

《D》
「もって君は後数時間。
そんくらいのもんの命らしい。」
太々しく告げた僕に君は
「そうか。」と一言笑って言った。
《A1》
全てに興味が無かった。まして
誰がどこで何しようと。だけど
ヤケに煩くチラつく君の
あの笑顔は嫌いだった。...

《A1》
僕はただの凡人。至って
普通の一人の少年。力
なんて無いし、死にたく無いし、
だから背を向け走り出した。
もしも僕が戦った果てに
人知れず朽ちたとしても、別に
この世界が辿る未来は、
何一つ変わらない。
《B1》...

《D1》
「さてさてどっから話そうか。
まぁ、そう言わずにちょっと座ってさ。
これはちょっとオカルトじみた
哀れな少年の話。」
《A1》
誰かに成り切る事は僕に
とって息するより簡単だった。
NGなんて出ないでしょ？
レンズ越しの現実(リアル)の世界なら。...

《A1》
「争いなんてなければいいのに」
「みんな笑ってられたらいいのに」
なんて理想の平和を語らう僕らは
不可視の痛みに涙する
正直見えない世界の誰かが
どうなったって構わなくって
たまたま見えてしまった命は
無視する度胸も無いだけ
《B1》...

《A1》
コトシの夏は嫌に暑過ぎて
買ったばかりのアイスが溶け出す
駄々捏ねたアイツの御機嫌取りに
一番好物の味にして
燃え尽きそうな程の太陽は
深く濃い影を貼り付け落とす
情け容赦もなく降り注ぎ
垂れて赤く滲んだ
《B1》...

《A1》
「君はなんでそんなに
素直じゃないんだ！」
周りが仰ることはだいたい
大抵こんなとこ
何かが他人と
違うらしい僕は
いつも白い目で見られて
指で指される
《B1》...

《A1》
良かれと思いした事が
意味を成さずにはみ出し摘まれ
八重に重ねた罪背負い
そぞろ彷徨うただただふらふら
流れる運命導かれ
人恋しさ温もり求めて
此処で会ったが定めだと
何かが走ったこの胸に
《B1》...

《A1》
私に向けられる
視線はとりどりで
「可哀そう」だとか「気が触れた」だとか
勝手にいい様に言われてる
あなたが去ってから
何年経ったかな
長いようだけど案外時間は
普通に過ぎてくの
《B1》...

《A1》
万事休すとはよく言うが
お先真っ暗暗すぎだろこれ
詰みに詰んだこのゲーム
墜落体制準備は万端さ
丁か半かの瀬戸際じゃ
誰も同情しちゃくれないさ
それでも込み上げた高揚感
ネジの外れた暴走戦闘車
嗚呼、二羽の兎を...

《A1》
めでたしめでたし幕を閉じた
物語裏では必ず
誰かが泣くようにできてるんだ
だってほら
めでたしめでたし幕は閉じた
後の事はどうでも良いんだ
誰かが血を流して泣き叫んでも
笑顔で幸せ語る なぁそうだろ？
《B1》...

《A1》
瞼の裏にはどんな時でも
あなたの笑った顔が浮ぶ
慎ましくても満たされていた
過去の記憶ばかり目で追って
ただ隣にいるだけで良かった
ただ居てくれるだけで良かった
もうこの世にあなたが居ないことを
埃被った器が告げた
《B1》...

《A1》
どれくらいの月日が経ったろう
瞼は閉じたがっている
ピクリとも動かない肉塊は
終幕の時を伺ってた
限界を紛らわす為
最後に口にしたのは毒団子
飢えた胃袋はそれさえも
消化できず吐き出した
《B》...

《A》
あぁ、今日も始まる「おはよう」sunshine
寝惚け眼はぼやけてcan't see
手探り探したレンズをつけて
状況把握の5秒前
全力疾走滑り込みsafe
チャイムの余韻が響くhomeroom
完璧優秀遅刻は回避
Oh my forgod ひとつだけ
《B》...

《A1》
遠く 伸ばし た手は
冷えた雫だけ拾う
あなたに言うはずの言葉は
悪戯に掻き消された
街の 灯りは溶けて
水面は揺れ弧を描く
映したその目は紅塗られ
紅く ただ滲むだけ
《B1》...

《A》
未来を信じて疑わなかった
目に見えない空虚を
当たり前がどんなに特別なことかも
知らずに
「あの頃は幸せだった」なんて
もう戻れないならいっそ
跡形もなく消えてくれた方が
楽なのに
《B》...