「そろそろ慣れました?」
スマホの画面に浮かぶ文字
「慣れないです」なんて言えるわけもなくて
ただぼんやりと溜息吐いた
「心配いらないです」
「僕は元気でやってます」
精一杯の虚勢でそう返した
溜息は小さな部屋に溶けていった
あの日見た未来はただの夢で
現実の僕は僕でしかなくて
所詮こんなものさと笑っても
どこか虚しくて少しおかしくて
ふと空を見上げてみると
そこには淡く光る月明かり
それは小さくて少し欠けていて
まるで僕のような月だった
朝の満員電車も
昼の日替わり定食も
夜のくたびれた帰り道も
同じ日々がこれからも続いてくのかな
人混みに揉まれしわくちゃの心
ワイシャツと一緒にアイロンかけ
昨日も今日も明日も明後日も
頑張って生きるよ
でも今だけは
忙しなく働く蟻たちも
今宵はどこか遠く雲隠れ
今夜は月がとても綺麗だから
僕は独り感傷に浸る
「たまには顔を見せなさい」と
届いたメッセージをそっと閉じ
「今はまだ帰れません」と心に
呟いた
僕はまだ欠けた月だから
星の見えない夜空でも
孤独な月の光が部屋に差す
街の明かりより弱くても精一杯に
輝いているんだ
たとえ今は欠けていたとしても
いつかきっと満月になる
今夜は月がとても綺麗だから
僕は少し背筋を伸ばした
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