思い出話を語るときに
君の顔が見れなかった
笑い声に紛れさせた
憎しみを
感づかれないように

懐かしさの奥には
まだ
血が噴き出しそうな
傷痕があって
痂になりきれずに
膿んでいる
そんな
傷痕があって

『懐かしいね』
と笑うとき
君の顔が見れなかった

だから今日は
僕の中では
君の声だけが咲いている

弾むような
君の声

踊るような
跳ねるような
歌うような

そんな
君の声が咲いている


ああ、そうか


君は幸せになれたんだと
僕は全てを理解した
もう辛さはなさそうだと
気付いて小さく頷いた

既に思い出は美しくなって
君の胸で輝いている
悲しみも怒りも
憎しみさえも
今は良い思い出に
変わったんだろう


ああ、そうか


もう僕だけなんだ
まだ思い出の傷痕を
大事そうに抱えているのは
膿んだ傷に
風を当てないように
庇って守って抱きしめて
縋る誰かを捜すことすら
臆病になってただ一人
立ち尽くしているのは


僕だけなんだね


そうか


そうか


なんて
素敵で滑稽で
哀れで愚かな
生き物だろう


幸せになりたいと
二人で
泣いた日を君は
覚えているかな
僕はあれから少しだけ
強くなれた気がするよ
辛いからと涙を
流すことがなくなった

あの日すら君にとって
幸福への礎になれたなら
なんだろう
それはとても嬉しいようで
少し悔しい

檻の中でうずくまって
傷を抱えて生きるのが
当たり前だと
思っていたのに

少しだけ痂は残り
時折足を引きずりながらでも
光に駆け出す君を見て

お幸せになんて
手放しで
僕にはまだ言えないけれど


お元気でと
見送ることは
僕にもなんとか出来そうだよ


僕はまだもう少し
囚われごっこを続けよう
鍵の開いた檻の中
勇気があれば抜け出せる
そんな闇の中

痂だらけの君が
外の世界で生きるのを
止める資格は僕にはない


ふと横を見れば
やはり君は
無邪気に笑って
僕に語りかけている
ぎこちなくそれに答えて
僕らは別れの言葉を吐いた

ばいばい
さようなら
どうかお元気で


君の声がまだ
僕の心に咲いている

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

さようなら

中学時代に仲の良かった子と久々に話して浮かんだ感情を、そのまま詩にしてみたものです。
彼女にとってはもう辛かった記憶でさえもただの思い出になっていて、私はといえばまだそれはただの思い出とは到底言えない生々しい傷で。
そんなあまり綺麗ではない素直な感情を込めたつもりです。

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投稿日:2009/04/22 02:25:48

文字数:898文字

カテゴリ:歌詞

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