『おぎゃあ、おぎゃあ』

ゴーン ゴーン ゴーン

二つの小さな命が産まれたのは、午後3時のことだった。
新たな命の誕生を祝福するは、教会の鐘。
国民も、産婆も、大臣も…そして、母である王妃も皆、喜んでいるはずだった。
しかし、母は我が子達をその胸に抱く前に息を引き取り、残された大臣や産婆は顔を真っ青にして、双子の赤ん坊を見つめていた。

「……ど、どうしましょう…。
よりによって、姉弟とは…。」

この国において、王族の長子の双子は忌み嫌われていた。
しかも、男女の双子ならば尚更。
昔から男女とわず長子が王位を継承するこの国では、長子が双子だった場合、それは熾烈な王位継承争いが繰り広げられた。
男女なら、王子派と王女派に真っ二つに分かれて醜い争いが起こった。

だが、しかし…産婆に問われた大臣は、何故か笑みを浮かべた。
ぞっとする様な、悪意に満ちた笑み。

「…ククク。
なに、簡単なことだ。
姉は王女として君臨させ、弟はお前が育ててしまえばいい。」

「な、何ですって?!
お気は確かですか、大臣…!
男御子を、公表しないおつもりですか!」

「ああ、そうだ。
それが、最善の策なのだからな。」

「ですが、大臣…!」

「うるさい、黙れ!
いいか…貴様はただの産婆だ。
王が死に、王妃も死んだ今、この国で一番偉いのはこの私なんだ。
…私の言うことを聞け。」

「……………。」

“王女がご誕生!
しかし、王妃様が亡くなられたため、大臣がしばらくの間施政を行う”

双子が産まれた翌日、国中にその知らせは広まった。
こうして一人の大臣によって、運命を共にするはずだった双子は引き裂かれてしまった。
何も知らない二人の赤ん坊は、それからすくすく育っていった。

そして、双子が10歳を迎えた頃、引き裂かれた二人は再会する。
…一人は王女、もう一人は王女付きの召使として。

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『鎮魂歌はいらないよ、姫(レクイエム)』2

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投稿日:2009/04/14 15:52:13

文字数:792文字

カテゴリ:小説

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