こんにちは!高橋一大です。
古い水槽の底に沈んだ街の模型を静かに眺めています。誰にも触れられないガラスの向こう側で、細かな気泡がゆっくりと天井へ向かって昇っていきます。その一粒一粒の中に、かつて誰かが吐き出したため息や、名前のつかなかった小さな感情が封じ込められているような気がするのです。静寂が広がる部屋の中で、水滴の落ちる微かな音だけが時間を刻み続けています。
私たちは日々、空中に漂う目に見えない破片を拾い集めるようにして生きています。かつて誰かが置いていった錆びついた真鍮の鍵や、薄暗い棚の奥で静かに埃をかぶる小さな標本箱。それらの小さな遺物に指先で触れるとき、指先から冷たい記憶がじわじわと体内に染み込んできます。形を失ってしまった過去の言葉たちは、夜の風に乗って遠くへ運ばれ、やがて群青色の空のすき間へと吸い込まれていきます。
冷たい壁に投影された影の重なりをひとつずつ確かめるように、言葉と音の網目を手作業で編み上げていきます。完璧に整えられた調和よりも、どこか歪んで歪んだ旋律の中にこそ、人間の本質的な美しさが宿るのかもしれません。鍵盤から零れ落ちる一音一音が、波紋のようにどこまでも広がっていき、見知らない誰かの胸の奥深くに小さな傷痕を残していく。そんな不可逆の変化を起こすことこそが、私たちが世界に対して投げかけられる唯一の問いかけなのかもしれません。
深く潜れば潜るほど、視界は透き通っていき、息を吸うことさえ忘れてしまいそうになります。果てしない静けさの中で鳴り響くかすかな残響に耳を澄ませながら、私は今日も見えない糸を手繰り寄せています。
いつか誰かがこの小さな手紙を拾い上げ、その表面にそっと触れてくれる日を夢見て。崩れ落ちていく世界の片隅で、静かな熱を孕んだ言葉を紡ぎ続けていきます。どこまでも遠く、澄み渡る深い青の底から。
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