夜更けの高架線を
古びた貨物列車みたいな疲労感が走っていく
蛍光灯の海に浮かぶ
名前のない島みたいなデスクで
誰かが静かにキーボードを叩いていた
画面の向こうじゃ
顔も知らない誰かが笑ったり
ため息を飲み込んだりしている
それなのに
こちら側の夜風はやけに無口で
缶コーヒーだけが妙に温かい
「ありがとう」なんて
砂漠のラジオみたいに掠れて届く
拍手は見えない
歓声も聞こえない
だけど深夜二時の通知ランプだけは
小さな灯台みたいに瞬いていた
古い漁船みたいなノートPCを抱えて
ぼくらは毎日
見えない海図を描いている
SEOだとか採用だとか
難しい言葉を並べながら
本当は
誰かの孤独を少し減らしたいだけだった
遠くで電車が軋む
雨上がりのアスファルトに
街のネオンが溶けていく
あの日送った求人票も
誰かの明日へ流れ着いたんだろうか
画面越しの拍手は見えない
だけど確かに届いていた
防波堤にぶつかる波みたいに
静かで
何度も
胸の奥を揺らしていた
人はきっと
巨大な都市の中で
小さな焚き火を探している
その火が消えないように
今日もまた
ぼくらは暗い水路を進んでいく
見えない声を頼りにして
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