※注
wowakaPさまの「アンハッピーリフレイン」を聞いているうち
頭の中をぐるぐるし始めた自己解釈です。
吐き出したくて仕方がないのですがPV作る技術もないので小説で。
多少の流血表現がございます。妄想も暴走しております。ご注意をば。
読んだ後の責任は負いかねます。
三日が経った。
ハートの女王は、今日、死ななければならない。
「走馬燈、全然見えないわ。まあひたすら戦ってばかりで大した思い出もないから仕方がないけれど」
呟く言葉に返答はない。
今、女王の部屋には、誰もいない。兵は全員下がらせた。部屋にいるのはハートの女王と、蛙の王様だけである。この三日で蛙の王様は更にやせ細った。今にも死にそうだ―――と考えるハートの女王の唇は笑みの形をしている。
想い人と共に死ねる。
これ以上嬉しいことが他にあるのか。
ハートの女王は自分の獲物である白い銃を取り出す。しばらくその美しいシルエットを見つめてから、やがて銃口を自分のこめかみにつきつけた。使い慣れた銃を介して、静かな自分の心臓の鼓動が伝わる。
こうして。
この場所で。
一体何人の女王が命を絶ってきたのだろう。
中には逃げだそうとした女王もいた。だがしかし、女王は自殺でなければならないという決まりはない。どんな形であれ、死ねばいいのだ。つまり逃げた女王の末路は―――言わなくてもわかりきっている。
だが、自分は歴代の女王の中でも一番幸せだと、彼女は思う。走馬燈の中、戦いの映像の合間合間に、対峙する蛙の王様の姿がある。いつでも引き結ばれている、涼しげな口元。凛とした佇まい。
ああ。
なんて、しあわせ。
「さようなら、ハートの国。実を言うと大ッ嫌いでした。さようなら、蛙の王様。いい恋をありがとう」
好きよ、と。
呟いて、引き金をひく。
銃口から細く煙がたちのぼり、天井へ向かう。銃の衝撃は、手にびりびりと痺れと痛みをもたらしていた。それよりもっと痛いのは―――蛙の王様に掴まれた手首。ばらり、と、スローモーションのように、蛙の王様の体から、解けた縄が滑り落ちる。
「―――どうやって」
「気の荒い連中のおかげだよ」
言って、蛙の王様は、空いている手を持ち上げてみせた。色のついたガラスの破片。その色には見覚えがあった。一度、酒に酔った兵士が、ワインの瓶を蛙の王様に叩きつけたことがあった。瓶は粉々に砕け、蛙の王様は大怪我を負った。いつの間にか、破片を持ち込んでいたらしい。あの怪我でよく頭が回ったものだ。
「言っておくけれど、私を人質に脱走しようだなんて思わないことね。どうせ私は今日死ななければならない人間だもの。どうせもう、新しい女王だって決まっている頃だもの。兵士達は迷うことなく私と共にあんたも殺すわ」
「だろうな」
淡々とした声色に、ハートの女王は薄く笑う。
「結局こんなもんよね、初恋なんて。……ま、私にしては、上手く運んだ方か」
「……」
「クローゼットの裏に女王専用の隠し通路がある。城の外の森に出るから、適当に国外へ脱出するといいわ。……その様子じゃ国外へ出る前に途中で息絶えてもおかしくなさそうだけれど、そんな情けない死に方はしないでよ」
さっさと去れ、と言い、ハートの女王は蛙の王様の手を振り払おうとする。しかし、その細い腕の何処にそんな力があるのか、腕は一向にふりほどけない。蛙の王様は、強い力とは対照的に、あくまで静かな声をかける。
「俺を逃がして、あんたは死ぬのか」
「だから何? あんたには関係ないわ」
「頭のおかしい法律を疑ったことはないのか。一度も? 間違っている、従うなど馬鹿馬鹿しい、そう思ったことはないのか」
「思ったところでどうなるの。あの法律は古くから脈々と続いているのよ。国のあり方そのものと言っていい。今更変わったりしない。今更、遅い。どうだっていいわ、私はもうこの国とはお別れだもの。どうなろうが知ったことじゃない」
蛙の王様が舌打ちをした。綺麗な口元が歪む。ハートの女王の握る白い銃を無理矢理奪い取り、投げ捨てた。暴発したらどうするんだ、という文句の言葉は、喉の奥に消えた。
気が抜ける蛙の着ぐるみ頭が、恐ろしく至近距離に迫り、そのままハートの女王に頭突きを決め込んだ。思いの外柔らかい素材で出来ていたため痛みはない。蛙の王様はしばらくそのまま凍り付き、やがて苛立たしそうなため息をついた。
「ああ、鬱陶しい着ぐるみ頭だ畜生」
「……はあ?」
「もういい。……あんた、振り返れば戦いしか思い浮かばない人生でいいのか。それで十分なのか」
「十分よ。恋が出来ただけ十分」
「何も他に望みはないと?」
含みのある言葉に眉を顰めるハートの女王。蛙の王様は、そこで初めて、薄い笑みを浮かべた。今までハートの女王が見てきた中で、最も美しいと思うような、冷たく甘い笑みを。
「蛙の国の民は短命だ。俺の寿命もじき尽きる。……あんた、俺と死にたいんだろう。俺の命が、欲しくないのか」
「―――、欲しい」
甘い笑みに絆されて、口から滑り落ちる本音に、蛙の王様は笑う。
「なら、来い。地獄の果てまで、一緒に逃げよう」
アンハッピーリフレイン 自己解釈してみた【03】
一日で終わらせる!
と謎の情熱を持って、リアルタイムで書き殴っております。
誤字脱字がありましたらばそっと教えていただければ幸いです。
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