しばし、無音の時間が続いた。
 それが数分だったのか、数十分だったのか、もしかしたら五分もたっていなかったのかもしれないが、そんな時間の感覚でさえ麻痺するような空気があったのである。
「おい、あんた――」
「黙っていてください。自分の立場くらい、わきまえてくださいね。私はいつでもあなたを殺せる。あなたに私に指図をするような権利があるとは思わないでください。
 ――どうします、先生? 交流もそう深くない教え子と、自分の命、天秤にかけるまでもないですよね?」
 けらけらと愉快そうに笑うミキは、来るっているという様子ではなく、普通の女の子と言う印象を受ける。
 キヨテルも、ドアの向こうで迷っているようだった。それもそうだろう。何せ、大してかわいくもない一生徒と、自分の命のどちらをとる、とある意味究極の選択を迫られているのだ。この場所でなく、廃屋とか、そんな場所で、ここにいるのがレンとミキとキヨテルだけであれば、キヨテルは間違いなく逃げ出している。と、よく知りもしないくせにレンは勝手に予想していた。
  どうする。逃げ出すなら、逃げ出せばいい。逃げ出したって、何も恥ずかしいことじゃない。生きようとするのは生命の本能である。しかし、このあたりにはお前の醜態が知れ渡ることになるだろう。そうなったら、もうお前はここにはいられない。周りからは卑怯者、臆病者とののしられ、自らは罪の意識にさいなまれる――。
 ミキの笑い声がいっそう大きくなった。
「――わかりました」
 キヨテルが静かに言った。
 ミキが笑うのをやめ、キヨテルの答えを待つ。
「鏡音君には何もつみはありません。罪のない誰かを身代わりにしてまで逃げるつもりはありませんよ」
 その答えが気に入らなかったらしい、ミキの表情が憎憎しげに歪んでいったのを、レンは見過ごさなかった。
「見捨てたりはしない、と?」
「勿論です。何度も言いますが、彼に非はこれぽっちもありませんから」
 さらにミキの苛立ちに募る。
「善人面して…」
「さあ、早く人質の交換と行きましょう。鏡音君は無事に解放してくれるんですよね?」
「…ええ、無意味に傷つけたりはしませんから。…ほら、『カガミネクン』、立ってください。あなたの代わりに優しい先生が死んでくれるそうですよ」
 レンは、そっと顔を上げたのだった…。

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鏡の悪魔Ⅴ 22

こんばんは、リオンです。
あまり進んでないです。
何でかって…。一時間半ほど前からものすごく睡魔が…。
何度意識が飛んだか(ぇ
部活ちゃんといけるかな(汗

閲覧数:242

投稿日:2010/07/28 00:43:58

文字数:976文字

カテゴリ:小説

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