その日は随分と平凡で、私──いや、世界中の人々にとってもきっと当たり障りのない一日だったと思う。
私なんか暇つぶしにラジオ聞いて勉強サボって、「勉強なんて死ねばいいのに」と呟いているほどだった。
だけど──突如、“平凡な一日”に幕が下ろされたんだ。
『──の途中ですが、今から××大統領からあるお知らせがあります。』
「ったく、なんなの……」
そう文句を言いながらも、素直に耳を傾ける私ってなんなんだろう。
そうこうしているうちに大統領は喋りだした。しかし、残念ながら私には英語が分からない。
だけどよく聞いてみると大統領の声は泣いているのだろうか、震えていた。
20秒後、大統領が話を終えると翻訳係の人が代わりに日本語で話す。
──しかし、それは「衝撃的」の他に何もないぐらいの内容だった。
「非常に残念なことですが、本日地球は終わります」
大統領の言葉を翻訳する人から聞こえた言葉。
私は数分の間、唖然としていた。
いつの間にか大統領も翻訳係もいなくなり、さっきまで流れていたラジオが再び流れ始めた。
<ヘッドフォンアクター>
私はふと窓の外を見る。
大きな鳥たちが空を覆いつくし、渋滞中となっていた。
きっと鳥たちも野生本能とかで地球が終わることを解ったんだろう、三日月を飲み込んでどこかへと向かっていた。
私はそれを見飽きたかのように、窓の外から自分の部屋にと視線を戻す。
──やりかけてたゲーム。
──ほぼ手付かずの参考書。
……さっきまで過ごしていた時間はなんだったのだろう?
平凡な一日に勝手に幕を下ろされて、そのうえ地球滅亡? ──ふざけるな。
私はどこからもなく現れる怒り任せに、机の上を撒き散らす。
ゲームや参考書は無慈悲に床に落ちる。
落ち着け、こんなことしても意味がない──そう頭の中では理解しているのに、体は理解しきれていなかった。
ふと、落ちきれなかった、お気に入りのヘッドフォンが目に映る。
私は震える身体をいなすの様に、すぐにヘッドフォンをした。
ローカル操作でお気に入りの曲を探そうとした。──しかし、それも不可能だった。
i podの無機質な画面には『不明なアーティスト項目』と無機質な文字が出て、しかも『タイトル不明 №??????』と出ていた。
私が更にムカムカしたのは、もはや言う必要もないだろう。
私は怒り任せに、今度は枕を殴ろうとする──とたんに、耳元に流れ出した。
『──生き残りたいでしょう?』
「……!!」
──気がついたら、私はスニーカーの紐を結んで外に出ていたのだった。
→
外に出て、改めてあぁ、本当に今日地球が終わるんだなと思った。
目の前には揺らめく摩天楼。
それは一瞬だけ、私の心を奪ったのだった。
そして、今まで外に出ていてなかったので気がつかなかったけど……
人々の悲鳴が、物凄くうるさい。
悲鳴を上げている場所は──もうちょっと先にある交差点だ。
ここでこんなにうるさいなんて、あっちではどれくらいか予想がつかない。
『──そんな考え事してる暇があったら、さっさと走る!』
「走るって……何処へ?」
『──あそこ。』
ヘッドフォンからの声は、まるで本当にいるかのように自然とあの丘を見てしまう。
何故だろう、と思ったが、答えはすぐに出てきた。
──この声はどう聞いても、紛れもなく、聞き飽きた自分の声だから。
ヘッドフォンからの声は、突飛すぎる世界事情についてけない私を無視して命令(に近いもの)する。
『──そう。あそこへ、走るの。』
「どうして?」
私は、自分の声に質問をする。
そしたらフフ、と嗤って、
『──あの丘を越えたら20秒で、その意味を嫌でも知ることになるよ。』
「……?」
『──さぁ、疑わないで耳を済ませたら──』
自分の声だから、なのかもしれないが、何故か隣に──いや、私の身体の中にいるような感じがするのだ。
無機質な、何かが。
『──20秒先へ。』
自分の声がいい終わるのを合図に、私は走り出した。
蠢きだす、世界会場で。
→ → →
──そして、交差点にやってきた。
交差点は、劈く悲鳴と、風鈴の音に包み込まれていた。
それはもう、あの時の鳥の大渋滞とは比べ物にはならないほどで……。
私はヘッドフォンをしてよかった、と思った。──その時、
『──交差点、赤に変わるよ。』
自分の声でハッと前を見る。
声のいう通り、信号が黄から赤に変わる。──私は急いで走っていた足を止めた。
青に変わるまで、息を整えておく。
しかし老若男女問わず、私の背中を押したりして上手く息を整えることが出来なかった。
そうしてるうちに、青に変わってしまう。
(仕方ない……)
私はさっきよりも少し速く、走り出した。
走り出した先に、茶髪の少年がいきなり暴れだした。
その少年を見て、叫ぶように泣く出す黒髪の少女。
少年はやがて真っ赤に染まり、その光景を見て何かブツブツと祈りだす神父。
私は彼らに憐れみの目で見つめながら追い抜く。
人々はまるで意気投合しているかのように、同じ方向に歩いていった。
しかし私はその反対──あの丘の向こうへと、走る。
……すると、ヘッドフォンから依然声がして、
『──あと、12分だよ。』
と告げる。
あぁ、このまま全て消し去ってしまうのなら……もう術はないだろう、と私は嘆いた。
そして私はもう一つ思ったのだった。
──この人類賛歌は終わらない、と。
──そしたら、だんだん涙がこみあげてきて、10秒ほどかすめて周りが見えなかった。
それでも悲鳴合唱は止まない。
『駆け抜けろ、もう残り1分だ!!』
その淡々とした、容赦のない声ももう聞こえない位に。
ただ目指していた丘の向こうは、すぐ目の前に──
→ → →
息も絶え、絶え、たどり着いた。この丘に。
私は膝に手をつけ、顔を俯き、酸素を求める自分の脳にゆっくりと空気を送っていった。
少しづつ呼吸が楽になり、私はヘッドフォンの向こうの自分に話しかけようと、顔を上げたら──自分の目を、疑った。
突如、拍手の音がした。
私は音がした方を見ると、そこには、白衣の科学者たちが、
「素晴らしい」
と、手を打っていた。
私は口を開くことしかできず、目の前の“街の風景”にただ目を疑った。
──疑うよ。
その言葉さえ、実際に口にすることができないほど。
何もかもを見捨てて、息も絶え絶えて……丘の上から見た街はまるで──
「もう不必要だ」
そう言うと、科学者は片手間に爆弾を投げた。
でも、真実を知ってしまった私には、そんなことどうでもよかった。
箱の中の小さな世界で、今まで……ずっと生きていたこと。
全てが嘘を吐いていたこと。
──私の頭の中で、くるくるくるくると回ってさ。
燃え尽きていく街だったモノをただ、呆然と見ていた。
そしたら、だんだん悲しみが込み上げてきて。
ヘッドフォンをとろうと手にかけると、耳元で、
『──ごめんね……』
と声がした。
次の瞬間、糸が切れたかのように、目から涙がとめどなく溢れた。
声にならない叫びをあげ。
ただただ涙を流した。
やがて。
全てが嘘を吐く真実にうんざりしたかのように。
眠るように──
気がついたらもう完全に、息を引き取っていたのだった。
ヘッドフォンアクター【自己解釈】
意外と時間かかった……
脱字あるかもしれません><
ミリオンまで駆け抜けろ!![http://www.nicovideo.jp/watch/16429826]
コメント1
関連動画0
ご意見・ご感想
友愛@in不可
ご意見・ご感想
次ゎ私もヘッドフォンアクター書くぞ!w
ちなみに…
メカクシコード書いたから
読んでくれたら嬉s((ry
2012/06/17 22:32:43
雪りんご*イン率低下
おぉ、頑張れ!w
友愛のメカクシコード実は読んでたりするw←
でももっかい読みに行くよ!!ww
2012/06/18 15:29:30