第十九章   

瑞希と「恋人」になってから、二ヶ月が過ぎようとしていた。
彼は変わりなく、私に愛情を伝えてくれている。
そんな彼に対し、有難い気持ちで精一杯の私だ。
彼とはすんなりと時間が進む様に感じる。
「心地良い」と言った方が合っているだろうか。
私はいつもの日常を送ってはいたものの、どこかしらで彼の存在が「安堵感」を与えていたのかもしれない。
彼から「セックスしたい」と言われる迄は。
いつもの様に私は私の楽しい独り時間を楽しみ、パートナーと食事を採る事もなく、
「おやすみ」と言う言葉だけの日常だった。
彼とは時間が合う時だけ、通話で「普通の会話」を楽しんでいた。
彼と恋人になって三ヶ月と言う月日が過ぎた辺り頃から、
ちょこちょこと私と会いたいと言う言葉が出始めていた。
それと同時に私の身体も求め始めた。
私は何故か恐怖感を感じ、私は私自身を知る為に「セックス恐怖症」と検索していた。
検索一覧から「性嫌悪症」と言う病気を知る事になった。
私はその病気の症状にとても当てはまり、自身が「性嫌悪症」なのだと知る事となる。
私の場合、精神的ストレスが原因だが、これは彼に伝えなくてはいけない事でもある。
深夜帯に私の病気の発覚を知り、明日の夜にでも伝えようと決心した。
煙草を咥え、深夜帯の外へと出る。
生温い風が吹いていたが、夜空は美しかった。
私は煙草に火を点け、落ち着こうと思い一つ一つの動作をゆっくりとする。
深く深く煙草を吸い込んでは吐き出す。
「性嫌悪症か…」自分自身を嘲笑うかの様に夜空を見上げ嘲笑した。
長い時間、深夜帯の暗がりで煙草を吸い続けた。
「さて、そろそろ入るか…」そんな独り言を呟き、家の中へと入る。
私は正直、「性嫌悪症」が分かった所で動揺もせず、只過去を嘲笑う事しか出来なかったのである。
ほんの少し水が飲みたくなり、温い白湯を作った。
明日、彼に伝えてみようそんな事を考えながら自室へと戻り、
お気に入りの香水の香りを纏う。
後一本だけ吸ったら眠ってみよう、そう思い煙草へと手を伸ばす。
煙草の火を見つめ、私は何故か泣いていた。
久しぶりに過去を思い出してしまったからだろう。
パートナーはすっかり眠ってしまっている、なるべく静かに私は泣いた。
夜も明け始めてしまった頃、私は眠りへと付こうとベッドへと潜り込んだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月は嗤い、雨は鳴く

恋人になった主人公と瑞希だが、身体を求められる様な発言に恐怖を感じ、「性嫌悪症」なのだと自覚する。

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投稿日:2024/07/05 02:55:45

文字数:980文字

カテゴリ:小説

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