外に出ると、やる気のない太陽の光が二人を迎えた。肌を刺すような冷たい風が二人の髪を早速さらっていこうとする。
「うーっ寒いねえ。もう冬だね」
ミクは体を縮こませながら後ろを振り返って微笑んだ。
「…そうだね」
リンはうつむいたままとぼとぼとミクの後ろをついて来る。
「こ、こんなに寒いと温暖化なんて嘘みたいだよね」
「…そうだね」
「…あ、あとで焼き芋、焼き芋食べようか!二人ではんぶんこしよっ」
「…そうだね」
「…」
リンは全く顔をあげずに小さく相槌を打つだけで心ここにあらずといった様子だ。
…うーんどうしよう。心の中でミクは苦笑しながら歩調を合わせてリンの隣に並んだ。
「大丈夫だよ。マスターもレンもそんなことでリンのこと責めないから。ほらそんなに落ち込まないの」
「…うん」
実はさっきまで家ではリンとレンの新曲の練習をしていた。今日は二人で合わせて歌う三日目だったのだが、未だにリンは曲の調子がなかなか掴めずにつっかえてばかりだった。
合わせの初日から何度も曲を途中で止めてしまい、リンの為に休憩が途中なんども入れられたのだが、リンはちゃんとやらなきゃと焦ってさらにつっかえてしまう悪循環にはまってしまった。自分のせいで部屋の空気がどんどん重いものになっていくのは辛かった。
そして三日目の今日、また曲が止まった時にレンが小さくため息をしたのが分かり、思わずリンは涙をこぼしてしまい、あとはもうどうしていいのか分からなくなってしまった。
気分がよくなるまで外の空気でも吸っておいで、とマスターに言われてちょうど練習を見ていたミクに付き添ってもらい外にでてきたのだが、リンの気分は最高に落ち込んでいた。どうしよう、どうすればちゃんと歌えるんだろう…レンのこと怒らせちゃったのかな…
考えれば考えるほど嫌なことしか思い浮かばず、じわり、とまたリンの目には涙がにじみ始めた。
今日の晩御飯なんだろね、と話しかけようとしていたミクはリンを見てぎょっとした。ど、どうしよう…ああこんな時メイ姉ぇだったら背中でもばしばし叩きながら「なんとかなるわよぉ」とかなんとか言って悩みなんて忘れさせてくれるんだろうけど私にはできないよう。
ミクが困っておろおろと辺りを見回すと、ちょうど公園が向こうに見えてきたので、おたおたしながら「こっ公園はいろっか」とかなんとか言って(慌てていたので何言ったのか自分でもあいまい)歩みが遅くなってしまったリンとともに公園に入る。
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ナユタン星人
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「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
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バッと通ったトラックが君を轢き...カゲロウデイズ 歌詞
じん
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美しく見えて綺麗に残っている
あの頃に戻れない辛さは痛いよ
もう一度もやり直せない事実が
自分の心を苦しめて僕は泣いた
絶望を食らい尽くして 耳障りのいい話を
理不尽と一緒にして 蹴り飛ばして笑っている
こんな筈じゃないだろう 欲しい物はまだ先だよ
差引きばかりな大人に...期待は持ちましょう
Staying
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「僕の命の歌で君が命を大事にすればいいのに」
「僕の家族の歌で君が愛を大事にすればいいのに」
そんなことを言って本心は欲しかったのは共感だけ。
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苦しいから歌った。
悲しいから歌った。
生きたいから歌った。ただのエゴの塊だった。
こんな...君の神様になりたい。
kurogaki
ここまで来たからさ
街はもう見えないからさ
何時になっただろう?
ここでは意味も無い話だ
分かってても
数字が浮かぶ
眩い恒星が
宙に昇ったから ...君との答え 歌詞
やしろ
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