第十三章     

「私自身」を大事に出来なくなってどのくらいの冬を迎えただろう。
「都合の良い共依存」なんてものが続く筈もなく、
その人の考えている事が分からないな、と考えを巡らせたりしていた。
つまらない日々にも慣れ、私はいつも通りの「日常」を取り戻しつつあった。
朝は気怠く起き、一日の私の「日常」を過ごして行く。
中身なんてない様な「日々」の繰り返し。
恐らく3ヶ月はインスタも触って居ないだろう。
冬になりかけになっていた頃だった。
パートナーとは相変わらずの関係で「会話」すら殆どない。
「孤独感」は私にとって憑き物の如く常にあったが、
それと同時に「寂しさ」すらも与えなくなっていた。
人とは「無」になると本当に大事な物を見落とす事が多い様に思う。
心も時間と共に鈍感になり、悲しい程の人への関心もなくなる様に感じていた。
こんなんじゃいけない、そう思ったのだろう。
私は久しぶりにインスタを見てみる事にしてみたのだ。
ボーっと雰囲気が素敵そうな人にいいねを押してみたりする。
パートナーはすっかりと眠りに付く様子で、「おやすみ」と簡単な言葉だけを
交わし、私はインスタへと目を通していた。
その夜、私の数少ないいいねに反応をしてくれた人がいた。
彼からdmを貰い、とても丁寧な言葉で「こんばんは、髪色綺麗ですね」と褒めてくれた。
「ありがとうございます」そんな言葉を返し、0時近くまで彼とのdmは続いた。
なんて事のない「会話」、私はそれが嬉しかった。
「性欲」に塗れている世界での「なんて事のない会話」が嬉しかったのだ。
何故だか丁寧な対応をしてくれる彼に「安堵感」とも似た感覚を覚えた。
お互いに堅苦しい会話だったが、彼には「落ち着く」と言った方が
きっとピッタリな言葉が合うのだと思う。
私からだっただろうか、「もう少し砕けた感じでお話しますか?」と、
問い掛ける事にしたのは。
少しづつではあるのだが、ぎこちなかった二人の関係に「友人」としての
フランクさが出始めていた。
彼からのdmが来なくなっていた頃、私は独り外の空気を吸いに
寒さを感じる外へと出た。
月や星が綺麗な夜空だった。
インスタには必ず付き物である、明日には連絡が来なくなるという事。
「まぁいいや」そんな風に考え、私は煙草を吸いながら夜空を眺めていた。
身体の芯が冷え切るまでに、そう時間は掛からなかった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

月は嗤い、雨は鳴く

通常通りの日常に戻りつつある中、久しぶりにインスタへと目を通す主人公。

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投稿日:2024/06/13 02:40:21

文字数:1,001文字

カテゴリ:小説

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