好きな人と仲良しでいられるのは、すごく幸せな事だと、俺は思う。
メイ姉とカイ兄も毎日楽しそうだし、ミクもマスターの見えないところで凹みながらも、それでも笑顔は絶やさない。
…ならばこの状況は、俺がおかしいのかな。
誰か、教えて下さい。




―Crush―
第一話




俺とリンは付き合ってる。
何を突然言い出すんだ、と思われるかもしれない。
けど、付き合い始めたのは、メイ姉とカイ兄が付き合うようになる前…いや、メイ姉がエラーに悩まされていた、あの頃より前の話だ。


「私たちはボーカロイド…作り物なんだよ?血の繋がりなんてモノ、最初からない」

「姉とか弟とか、その方が都合がいいから、そういう風に認識するようにできてるだけ」


メイ姉にそう言ったのも、本当は何より、自分たちがそう思っていたかったから。
血の繋がりがあったら…それはそれで、背徳的で面白かったかもしれないけど、そんなところにスリルは求めていない。
安全すぎる恋もつまらないけど、それでもある程度は安定してる方が、安心できる。
でも、それはある程度の話でしか、ないんだけど…。


そう、あれは俺が起動したばかりの時。
最初に目に入ったのが、彼女だった。
俺と同じように、起動したばかりだったみたいで、目を瞬かせて、こっちを見返してきて…。
一目惚れ、だった。
なんでそんなベタな惚れ方をしたんだ、って、今思うと呆れてしまう。
でもその時は、そんな事を考えている余裕はなくて、ただ、体温が一気に上がったように感じたんだ。
それと同時に、真っ赤なエラーの光が、一瞬だけ。
頭の中の無機質な声が、『深刻なエラー』の『深刻』を言い終えるより早く、何事もなかったように静かになった。
当然、俺は慌てた。
エラーが発生した事ももちろん、すぐに消えた事にも、怖くなった。
理由は、すぐに解ったんだけど。


『一緒にいたい』

『なんだかドキドキするんだ』

『この感情は…好き、っていうのかな』

『今の光は何?』


そんな感情の一部が、一気に俺に雪崩れ込んできた。
それが、目の前にいるリンの物なのか、俺の物なのか、まったく境目が解らなくて…でも不思議と、2人で同じ事を考えているんだって、すぐに理解できた。
根拠はないけど、間違いないと思う。
そうじゃなかったら、俺のエラーもリンのエラーも、消えたりしない。
恐怖なんて、すぐに引いていった。
…それは時間にして、僅か数秒の事。
俺たちを見守っていたマスターとメイ姉、それに後ろでミク姉に付きまとわれていたカイ兄。
その全員に、2人一緒に、笑顔を向けた。


「はじめまして!」




多分、もうみんな薄々気が付いてるような気もするけど、あれ以来、誰かにちゃんと話した事はない。
でも、あれから時間がたつにつれて、どういう事かは解ってきた。
…俺とリンは、他のVOCALOIDと違って、元々1つのプログラムだったのが、2人に分かれた存在。
そういう意味では、双子というモノにも、すごく近い。
だからだろうか、時々、俺たちの意識が共鳴して、どっちがどっちなのか、そもそも1人なのか2人なのか、ぐちゃぐちゃになる。
メイ姉に、ベランダで悩みを相談された時もそう。
あの時も、気が付いたら"共鳴"していた。
でも、それに不快感はない。
お互いに何を考えているか、声に出さなくても伝わって、ちょっと面白い、なんて思ってるくらい。
それに、好きだって思ってる、思われてるって、実感できた。
…前までは、それだけだったのに。


「なんでだろうな…」


不安、なんだ。
好きだよって、声に出さずに言い合って、確かめて…それが、普通になってしまって。
確かに好きなのに、それが本当に好きという感情なのか、自信がなくなっていた。
それに気付いて、俺は愕然とした。
起動した時から、リンが好き。
でもそれは、リンがそんなに好きじゃなかった頃が、存在しないという事。
俺は、『好きじゃない』って事が、解らない。
なのに、どうしてこの『好き』が、『好き』だと断言できる?
いつしか俺は、周りの人たちに嫉妬するようになっていた。
今、仲良くしていられる事が羨ましいんじゃない。
安定しすぎた恋をしてきたせいで、俺たちがほとんど体験しないで終わってしまった事、その思い出を、持っているから。


「…片想いって、何だよ」


それが解れば、この気持ちも楽になるかな。
誰か、教えて下さい。
言う相手もいないまま、吐き出された言葉は、むなしさだけ残して、空中に消えた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【レンリン注意】―Crush― 第一話

ずっと書きたかったけど、どう書けばいいか解らないまま後回しにした結果がこれだよ!
なんつーgdgdだよこれorz
どうもこんにちは、桜宮です。


ちょっと気分を変えて、レンリンを書いてみました。Errorシリーズ第四部です。
今回のタイトルのCrushは、ズバリ、『片想い』。
っていうか、そんな意味があった事を知らなくて、辞書を見てビビりました。
でも勢いで付けてしまったようn(ry

Errorを書いている時点で、いずれ番外で書くつもりだったんですが…なかなか話がまとまらなくて、こんなに時間がたってしまいました(汗
最初からそのつもりで、Errorにもところどころ、そういうシーンをちょろっと入れてたりしてたので、『やっと回収できる』という気持ちと、『どうやって回収しよう』という気持ちが混ざってます(滝汗
だって…投稿したのは後になってからだけど、書いたのはすごく昔の事だし…←

ちなみにこの事は、Errorを書いている時点でリアルの知り合い(リン廃)にも伝えていたので、「レンリンマダー?」と言われるたびにビクビクしてたりしました←
とりあえず、書き始めたぞーとだけ言っておきます(殴


しかし、本当にもう少し早く書き始めるべきでしたかね…。
2人だの1人だの、どっかで聞いたような話になってしまいそうな…それはないか←

では、長くなってしまいましたが、読んで下さると嬉しいです!
よろしくお願いします…。

閲覧数:930

投稿日:2009/06/29 16:35:24

文字数:1,886文字

カテゴリ:小説

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  • 桜宮 小春

    桜宮 小春

    ご意見・ご感想

    紫薔薇さん>
    コメントありがとうございます!
    本当に、Errorシリーズがここまで長く続くとは思ってませんでした←
    楽しみにしていただいているようで、嬉しいです!
    上手く書けるかちょっと不安だったりしますが、頑張りますね!

    2009/06/29 20:49:12

  • とと

    とと

    ご意見・ご感想

    来ました!エラーシリーズ!!(ty
    どうも、紫薔薇です^^
    リンとレンの話ですか!
    今後の展開が楽しみです♪
    これからも頑張ってくださいね!

    2009/06/29 19:53:56

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