―――《大獄門》をくぐった先にあったのは、クロイツェル王国にもありそうな街外れの草原だった。
「なんか、普通だね」
ぽつりと言ったリンに、レンが頷くいた。
「新たに足を踏み入れし者達よ」
背後から掛けられた声に、二人は同時に振り返る。
「ここは《大獄》。私達は赦されざる罪人。幼き二人よ、汝らの罪は何ぞ?」
「そういう貴方はどちら様かしら? 青い髪の御方」
今は入れ代わっているので、レンが『リン』として対応する。
「何、私は金次第でいくらでも傾く天秤ですよ」
いかにも優男といった感じの男に、二人の瞳は警戒の色を強めた。二人とも、こういったタイプの人間は警戒して対応することにしていたからだ。目的がわからない男の言葉に、当たり障りのない言葉に皮肉を交ぜて返す。
「なら、貴方にご助力頂いた人は破産ですわね」
「これは手厳しい」
レンの皮肉に、男は少々大袈裟に肩をくすめる。
天秤とは法律や裁判に関わる人間が自虐を織り交ぜて自らを呼ぶ言葉だ。
“金次第でいくらでも傾く天秤”とは早い話、賄賂で対応を変える法律関係者の事だ。おおかた《強欲》の大罪で堕とされたのだろうとレンは見当をつけた。
「青の《大罪印》・・・ミオソフィリエの方かしら?」
国ごとに《大罪印》の色は違う。
リンとレンのいるクロイツェル王国は黄色。目の前の男のように青色なのは、クロイツェル王国からメフィーレ海を隔てたミオソフィリエ王国のもの。クロイツェルのすぐ東にあるフィステューゲン王国は淡い翠色。ミオソフィリエからセクリア海を東に行くとある神秘的な島国、ウェステティリア皇国な紫色だ。
「そういうお二人は?」
二人は視線を交わすと、揃って《大罪印》のある手を出した。
「黄色の《大罪印》・・・クロイツェル王国ですか。にしても、半分ずつとは珍しい。嗚呼、欲しい。欲しい。半分に分けられた印を持つ、珍しい《大罪人》。欲しい!」
「なんかヤバイ!」
明らかに異常なその様子に、二人は後ろに跳び下がる。
「君達はとても興味深い。いくらで売ってくr・・・」
言葉は最後まで続かなかった。レンがドレスの胸元から取り出した短剣で彼の胸を突いたからだ。
抜いた短剣から溢れた血に染まるドレスに、レンが気まずい顔をする。
「ごめん、リン。ドレス汚しちゃった・・・リン?」
レンがリンに向き直って苦笑する。大丈夫と笑いかけた、リンの表情が固まる。
「ぁ・・・れ、レン!」
「!!」
振り返ったレンが反応できたのは、僥倖と呼んだところで差し障りないだろう。
確実に心臓を突いたはずの男が、二人に手を伸ばしていた。
「寄越せ・・・寄越、せ・・・」
これは化け物だ。
共通の見解を出した二人に、男の血まみれの手が伸びる。
二人はくるりと背を向けると、手を繋いだまま一目散に逃げ出した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【オリジナル小説】ポーシュリカの罪人・4 ~堕ちた先には~

今回から《大獄》編です。
ちなみに、
クロイツェル王国→黄ノ国
フィステューゲン王国→緑ノ国
ミオソフィリエ王国→青ノ国
です。

リン「・・・で、なんで私達はここにいるのかしら?」
零奈「だって・・・やってみたかったんだもん・・・」
レン「さいですか」
零奈「レン君冷たい!! というか、一つ聞きたいんだけど」
レン「何?」
零奈「短剣、どっから取り出したの?」
リン「アレの事? ドレスに仕込んどいたの」
零奈「何でそんな物騒な事をッ!?」
リン「殺し屋を返り討ちするために決まってるじゃない!」
レン「ちなみに、仕込むためのポケット縫い付けたの僕」
零奈「お疲れ様です」
カイト「やあ君達、そこで何してるの?」
リン・レン「出たーーーッ!!」
レン「僕、ちゃんと心臓を一突きしたはずだよ!?」
カイト「あんなので私は死にはしない!(キラッ)」
リン・レン・零奈「卑怯だ!!」
??「・・・・・・」
カイト「ぅわ! 何か誰かいる!?」


??さんは次回登場キャラです。
ちなみに、カイトさんは「悪徳のジャッジメント」のイメージで。

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投稿日:2011/02/20 20:58:46

文字数:1,165文字

カテゴリ:小説

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