『いただきます』
そうして朝食を食べ始める二人。まだ、少し眠そうな目で、二杯目のコーヒーを飲みながら朝食を食べる神波。
 (…寝坊さえ治してくれれば、良いマスターなんだけどな)
 その神波を見ながら朝食を食べるミク。ミクとしては、マスターである神波は温厚な性格で、作る歌は歌っていて気持ちが良いが、寝坊がひどい所は神波に最優先で直してほしい所だった。今年から神波は研究室に入っているが、彼をサポートする先輩も手を焼いており、先輩とミクの二人で対策を考えてはいるのだが、ある程度の改善はされているが、決定的な対策はまだ見いだせていないのが現状だった。
 (…なんとかしなきゃいけないんだけどな)
 一方の神波も自身の寝坊がひどいことは自覚しているのだが、現状ではそこまで力を入れて直したいとは思っていなかった。現状ではゆっくりではあるが改善できているので、時間をかけて直していけば良いと思っているが、その自覚が甘いことも感じていた。

 「ごちそうさまでした」
 「…マスター、私が片付けますから、打ち合わせの準備をして下さい」
 「うん」
 ミクに急かされる形でバースデーソングの打ち合わせの準備をする神波。打ち合わせといっても、どこかに出かけるわけではない。打ち合わせは仮想空間で行われるため、家にいながらにして打ち合わせに参加可能であり、今の神波がする必要があるのは、せいぜい今回の打ち合わせの議題とバースデーソングに関して、決まったことを再確認する程度である。
 バースデーソングというのは、初音ミクの誕生日である8月31日に、彼女に対するバースデープレゼントとして送られる歌のことである。今回のバースデーソングでは、同日に生まれ、かつ公式のライブなどの様々な分野で活躍している、ワンオフの"初音ミク"に対するバースデーソングという形を取っている。今年は、特に記念すべき年であるので、歌以外にも、様々な分野で類似する企画が多数行われていることは神波も知っていた。
"初音ミク"はヒューマノイド型のアンドロイドとして実体化する前からバースデーライブは行われており、かつては、スクリーンに投影された"初音ミク"がライブを行っていた。ヒューマノイド型のアンドロイドが実用化された現在では、その役目もまた、実体化した特別な"初音ミク"へと引き継がれている。そのワンオフの"初音ミク"というべき存在は、文字通り世界でただ一人の特別な"初音ミク"という位置づけになっていた。一方、それ以外の"初音ミク"はマスターなどの各人の数だけいるといっても過言ではなく、総体としての"初音ミク"を中心とする世界は、あまりにも大きくなりすぎて、もはや誰にも把握できないだろう。

 「マスター、どうぞ」
 神波が今までに決まったことを再確認している間に、神波のミクが朝食の片付けを終え、二人分のメロンソーダの入ったグラスを持ってやってきた。
 「ありがとう」
 マスターである神波にメロンソーダの入ったグラスを渡した後、神波の隣に座るミクだった。

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初音ミクとバースデーソング 2節

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投稿日:2017/08/30 23:51:47

文字数:1,263文字

カテゴリ:小説

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