こんにちは!高橋一大です。
誰も訪れなくなった古い塔のてっぺんで、静かに冷めていくスープの表面をみつめています。白い湯気が細い筋となって空中に溶けていく様子は、まるで誰かが残した名前のない詩の終わりのようです。地上からはるか離れたこの場所では、風が渡る音と遠くの街で鳴る鐘の余韻だけが、私たちがまだ存在していることを微かに証明してくれます。
私たちは毎日、壊れた機械の部品を拾い集めるようにして、途切れた記憶の隙間を埋めようと試みています。かつて誰かが歌っていたメロディの破片や、使い古された鍵盤から零れ落ちた小さな響きが、底の深い箱の中に少しずつ溜まっていきます。光の届かない水底に沈んだ街の地図をたどるように、その小さな破片たちをひとつずつ指先で確かめながら、新しいかたちへと組み上げていく作業は、果てのない旅のようです。
窓の外には、終わりなき群青色の空が広がっています。果てしない広がりの中に浮かぶ無数の星々は、冷たい硝子玉のようになって静かに瞬いています。息を吸い込むたびに胸の奥がキリリと痛み、自分がまだ誰かの言葉を待っているのだと気づかされます。旋律を紡ぐという行為は、世界に対して小さな一滴の塗料を落とすようなものかもしれません。一滴の色彩は、どこまでも澄んだ水の中にゆっくりと広がり、やがて全体をあやしい色合いへと染め上げていきます。
誰も聴くことのない旋律であっても、どこかの誰かの夜を静かに彩る灯火になるのかもしれない。そんな予感だけを頼りに、言葉の糸を繰り寄せています。紡ぎ出された声が、凍りついた空気を揺らし、見知らぬ誰かの鼓動と重なり合う瞬間を夢見ながら。私たちはこれからも、終わりのない寂しさと美しさの狭間で、密やかな言葉を刻み続けていくのだと思います。この寂寞とした世界の中で、一瞬だけ交差する光の残像を信じながら。
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