【Sacrificio ~双子の章~】


―――――


僕達は 何処かで産まれて 捨てられた子供だった


優しい養父(ちち)と養母(はは)に拾われて


安楽(やすらぎ)に満ちた日々……



……幸福(しあわせ)……だった……



この安楽(やすらぎ)は

この幸福(しあわせ)は



永遠(とわ)に続くと信じていた



……それなのに……



―――――


あれは 僕達が14歳になったばかりの時だった


僕達の村は大規模な飢饉に襲われた


僕達の村は『神様』に護られていると信じられていた


大人達は村で唯一人の『預言者』である『彼』に縋る


青い瞳の『預言者』(かれ)は静かに語り出す



『村の子供を神に捧げ 祈るしか 他に道はない』



―――――


大人達の表情が凍りつく

幼い子供達は不思議そうに自分の両親(おや)を見つめる


まだ 分からないから

『神に捧げられる』という事は



……人身御供(死)を意味すると……



だけど 僕達には『関係ない』と思っていた

僕達が人身御供(いけにえ)に選ばれる訳がない



だって 僕達は『愛されている』から



父と母(りょうしん)が僕達を手放すはずがないと思っていたから



―――――


それから間もなくの事だった


『……すまない……
 村の為に 人身御供(ぎせい)になってくれ……』


突然 父が僕達に向けた言葉


『ごめんね……ごめんねっ……!!』


咽び泣きながら 僕達を抱き締める母



突きつけられた現実 廻る思考の果てに 僕達は……



―――――


村の大人達が 僕達に送るのは 感謝と別れの言葉

僕達は 唯 寂しげに微笑むだけ


『怖くない』と言ったら 嘘になるけど

村の為 父の為 母の為 皆の為


捨てられ 死に逝くはずだった 存在(ぼくたち)に


幸福(しあわせ)をくれた人達を 守れるなら



……僕達は 喜んで 神の『犠牲』になるよ……



―――――


我が家で 眠る 最後の夜

もう一度だけ 父と母の愛情(あい)を求めて

僕達は 扉に手を掛ける



『最初は 子供が欲しくてあの子達を拾ったけど
 いざ育ててみると 大変だし 邪魔でしかなかったわ』

『でも もうそんな日々を送らなくていい
 あの子達の代わりに 富が手に入る
 これで 私達の生活は 安泰だ』



我が耳を 疑った
我が目を 疑った

其処に居たのは 2体の『金の亡者』……



―――――


僕達は 初めて知った 『眠れぬ夜』を


無垢(しろ)の『心』に 広がる 憎悪(くろ)の『染み』




売られた(すてられた)


                       裏切られた(すてられた)



          愛していたのに(ゆるさない)



―――――


ついに 神の許へ 旅立つ時


父と母は 僕達を抱き締める


『愛している』
『ごめんね』


偽りの 言葉は 要らない
偽りの 涙も 要らない


僕達の 凍てついた傷心(こころ)には
もう 何も 響かないのだから


―――――


青い瞳の『預言者』(かれ)に連れられ

深い霧と森の先に待つのは 神の聖域



『死』という名の『恐怖』

『逃亡』という名の『衝動』


『愛』という名の『想起』


そんな僕達の 思考を読み取ったかのように

青い瞳の『預言者』(かれ)は静かに語り出す



『……君達は 死ぬのではない 生き続けるんだ 永遠に……』



―――――


この時の僕達は 『預言者』(かれ)の言葉の意味が 分からなかった


生き続ける?

もう『終焉』(し)は目の前に在るのに?



……それに……『永遠に』って……



……分からない……分からないけど……



仄暗い水底(みなそこ)に沈んでゆく 僕達の 瞳に 映った

青い瞳の『預言者』(かれ)が 流した 『涙』




……とても 綺麗で 印象的だった……




―――――


『苦しい』


これが 『終焉』(し)


隣にいる 『君』と 瞳(め)が合った



『大丈夫……ずっと傍にいるから』



そんな『声』が 聞こえた気がした……



―――――


無数の人影(かげ)と瞳(め)



僕達に 手を差し出す隻影(かげ)



表情(かお)は 見えないけど

笑っているような 泣いているような



僕達と とてもよく似た隻影(かげ)



その手を 取った瞬間から





         私
      ……   は ……
         僕

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Sacrificio ~双子の章~

『Sacrificio』の完成版です。

やってみたい事とは完成版でしか見られない文章を
何か書きたかっただけです(汗)。
前のバージョンにあります。

次回の予告しておくと
ルカが『吸血鬼』という設定なので流血表現があります。
そして例によって暗い話です。
後、KAITOとルカのカップリング……かな?

また『紙片』→『完成版』スタイルで行かせて頂きます。

では、読んで頂きありがとうございました!

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閲覧数:556

投稿日:2009/08/02 00:11:53

文字数:1,952文字

カテゴリ:小説

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