玩具屋カイくんの販売日誌(172)  心のある人形と、女社長

投稿日:2012/10/21 19:45:31 | 文字数:1,095文字 | 閲覧数:76 | カテゴリ:小説

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老舗の玩具店を切り回す、若手女社長。やっぱり冷徹さがなければ、務まりませんネ。

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TEXT
 

「ウン、やっぱり、兄さんに似てるよ」

レン君は、トートバッグに描かれた、天使の絵を見て笑って言った。

「う~ん、そうかナ。ちょい、恥かしいけどね」
そういいつつ、まったく恥ずかしそうでないのは、うれしそうにうなずくカイ君だ。

原宿にある玩具店、キディディ・ランドの売り場。
常連のレン君が、店長のカイ君と、売り場の雑貨を見ながら話している。

兄さん、と読んではいるが、別に兄弟ではない。親しみを込めて、言っているのだ。


●随分と美化して描いてある

すると、店の奥から、キディディ・ランドの女性社長、メイさんが出てきた。

「テト・ドールのシリーズ、どう?よく動いてる?」
動く、というのは商売用語で、売れ行きのことを言うのだ。
「ええ。テト・ドールの天使バージョン、悪魔バージョン。どちらの雑貨も、よく売れてますね。それから…」

カイ君は、ちょっと得意げに、売り場からトートバッグを取り上げて、メイさんに見せた。
「この、天使のカイコちゃんのバッグも、なかなか評判いいんですよ」

「あら。アタシは一番、売れないか、と思ったけど」
腕組みをして、メイさんは笑って言った。
「それ、あなたがモデルらしいじゃない。でもまあ、かわいいしね。随分と美化して描いてるわけだし」

「社長、それどういう意味ですか」

情けなさそうに言うカイ君を見て、レン君は思わず吹き出した。


●心無い社長もあります

メイさんは言った。
「いいわね。テト・ドール、売れそうね、今後」
カイ君はうなずく。
「いま人気の“メグ・ハミング”の人気に、追いつけ、追い越せの勢いです」

「ところでね」
メイさんは、腕組みをして言った。

「うちの店の船橋店の、普利間店長が言ってたわ。なんでも、一部ですごく盛り上がってる雑貨があるって」

レン君が、横から口を出した。
「あ、それ、“はっちゅーね”ですよね」
「そうそう、そんな名前だったわ。なんか、心がある人形だとか、そんな噂もあるそうよね」

「ここでも今度、仕入れたいと思ってるんですよ。でも、今のところ、手作りの製品だから」
カイ君が、トートバッグを棚に戻しながら言った。
「ミクのやつと、デフォ子さんが、手作りで作ってるんで、品薄(しなうす)でね」

「あら、ミクさんが作ってるの? 相変わらず、優秀な雑貨アーチストね。兄のあなたに似ずに」
メイさんとレン君は、うなずいて、顔を見合わせて笑った。

カイ君はさびしそうに、レジの方に歩きつつつぶやいた。
「心がある人形もあれば、心無い社長もいらっしゃいます」ε=( ̄。 ̄;A

(次回に続く)

雑貨の仕事をしてます。
キャラクター雑貨がらみで、キャラクターも好きです。

音楽も好きですが、好きな曲の初音ミクバージョンを聴いて感心!
ボーカロイドを聴くようになりました。

機会があれば、いろいろ投稿したいと思ってます。
宜しくお願いします。

twitter http://twitter.com/tamaonion

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作品へのコメント1

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    ご意見・感想

    今晩は! 早速拝読させて戴きました!

    今回は本家のカイ君の方ですね。今回は業界の裏側的お話だった感じで、とても興味深く読ませていただきました。

    なるほど、仕入れとか開発の目安は、やっぱり売れ行きですからね。メイさんの言葉は実にシニカルで現実的で、カイ君には、ちと冷たく感じたようですね。

    さて、メイさんも”はっちゅーね”の事に興味を抱いたようです。でもまだハンドメイドのネックがあるため、注意しているレベルですが、さて、どうなるのでしょうか?

    これからのお話も楽しみです! いつものように、ブクマ頂きました!

    ではでは~♪

    2012/10/21 20:44:12 From  enarin

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    メッセージのお返し

    enarinさん、感想を有難うございます!

    >なるほど、仕入れとか開発の目安は、やっぱり売れ行きですからね。

    そうです。でも、時にはお客さんを呼び寄せるために、話題性のあるものを仕入れる場合もありますね。


    >メイさんの言葉は実にシニカルで現実的で、カイ君には、ちと冷たく感じたようですね。

    (笑)意外と女性の方が、現実的のようですね。まあ、メイ社長とカイ店長は凸凹コンビという感じですか。


    >でもまだハンドメイドのネックがあるため、注意しているレベルですが、さて、どうなるのでしょうか?

    そうですね。ハンドメイドと量産、プレミアム感のある品と、安価で良く売れる品、どちらを取るか。そんな悩みも今後出てくるでしょう。

    >これからのお話も楽しみです! 

    有難うございます!
    また、感想を聞かせてくださいね。

    2012/10/21 22:22:45 tamaonion

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