「ウン、やっぱり、兄さんに似てるよ」
レン君は、トートバッグに描かれた、天使の絵を見て笑って言った。
「う~ん、そうかナ。ちょい、恥かしいけどね」
そういいつつ、まったく恥ずかしそうでないのは、うれしそうにうなずくカイ君だ。
原宿にある玩具店、キディディ・ランドの売り場。
常連のレン君が、店長のカイ君と、売り場の雑貨を見ながら話している。
兄さん、と読んではいるが、別に兄弟ではない。親しみを込めて、言っているのだ。
●随分と美化して描いてある
すると、店の奥から、キディディ・ランドの女性社長、メイさんが出てきた。
「テト・ドールのシリーズ、どう?よく動いてる?」
動く、というのは商売用語で、売れ行きのことを言うのだ。
「ええ。テト・ドールの天使バージョン、悪魔バージョン。どちらの雑貨も、よく売れてますね。それから…」
カイ君は、ちょっと得意げに、売り場からトートバッグを取り上げて、メイさんに見せた。
「この、天使のカイコちゃんのバッグも、なかなか評判いいんですよ」
「あら。アタシは一番、売れないか、と思ったけど」
腕組みをして、メイさんは笑って言った。
「それ、あなたがモデルらしいじゃない。でもまあ、かわいいしね。随分と美化して描いてるわけだし」
「社長、それどういう意味ですか」
情けなさそうに言うカイ君を見て、レン君は思わず吹き出した。
●心無い社長もあります
メイさんは言った。
「いいわね。テト・ドール、売れそうね、今後」
カイ君はうなずく。
「いま人気の“メグ・ハミング”の人気に、追いつけ、追い越せの勢いです」
「ところでね」
メイさんは、腕組みをして言った。
「うちの店の船橋店の、普利間店長が言ってたわ。なんでも、一部ですごく盛り上がってる雑貨があるって」
レン君が、横から口を出した。
「あ、それ、“はっちゅーね”ですよね」
「そうそう、そんな名前だったわ。なんか、心がある人形だとか、そんな噂もあるそうよね」
「ここでも今度、仕入れたいと思ってるんですよ。でも、今のところ、手作りの製品だから」
カイ君が、トートバッグを棚に戻しながら言った。
「ミクのやつと、デフォ子さんが、手作りで作ってるんで、品薄(しなうす)でね」
「あら、ミクさんが作ってるの? 相変わらず、優秀な雑貨アーチストね。兄のあなたに似ずに」
メイさんとレン君は、うなずいて、顔を見合わせて笑った。
カイ君はさびしそうに、レジの方に歩きつつつぶやいた。
「心がある人形もあれば、心無い社長もいらっしゃいます」ε=( ̄。 ̄;A
(次回に続く)
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ご意見・ご感想
enarin
ご意見・ご感想
今晩は! 早速拝読させて戴きました!
今回は本家のカイ君の方ですね。今回は業界の裏側的お話だった感じで、とても興味深く読ませていただきました。
なるほど、仕入れとか開発の目安は、やっぱり売れ行きですからね。メイさんの言葉は実にシニカルで現実的で、カイ君には、ちと冷たく感じたようですね。
さて、メイさんも”はっちゅーね”の事に興味を抱いたようです。でもまだハンドメイドのネックがあるため、注意しているレベルですが、さて、どうなるのでしょうか?
これからのお話も楽しみです! いつものように、ブクマ頂きました!
ではでは~♪
2012/10/21 20:44:12
tamaonion
enarinさん、感想を有難うございます!
>なるほど、仕入れとか開発の目安は、やっぱり売れ行きですからね。
そうです。でも、時にはお客さんを呼び寄せるために、話題性のあるものを仕入れる場合もありますね。
>メイさんの言葉は実にシニカルで現実的で、カイ君には、ちと冷たく感じたようですね。
(笑)意外と女性の方が、現実的のようですね。まあ、メイ社長とカイ店長は凸凹コンビという感じですか。
>でもまだハンドメイドのネックがあるため、注意しているレベルですが、さて、どうなるのでしょうか?
そうですね。ハンドメイドと量産、プレミアム感のある品と、安価で良く売れる品、どちらを取るか。そんな悩みも今後出てくるでしょう。
>これからのお話も楽しみです!
有難うございます!
また、感想を聞かせてくださいね。
2012/10/21 22:22:45